自民党の中にあって「消費増税凍結」を一貫して訴え続けてきたのが、西田昌司参院議員だ。政府はリーマン・ショック級の出来事が起きない限り、消費税率を引き上げるという立場を示してきたが、西田氏は不安を隠さない。
「アベノミクスで経済は再生路線に向かったが、金利が上がらずデフレ脱却には程遠い状態です。このため銀行の収益力は大幅に減少し、融資も伸び悩んでいます。何かの拍子で不良債権問題が発生したら、2008年のリーマン・ショック以来の金融危機に陥る恐れがあります。この時期に消費税を上げると、さらに景気が悪化する可能性が高い」
参院国会対策委員長代行を務める西田氏は、参院選から間もない8月6日、党役員連絡会が開かれた際、安倍首相にこう直言した。
「すでに消費増税を行う決意をされているのなら仕方がありませんが、私はいまでも反対です。今後は景気対策をしっかりとやって頂きたい。そのためには大胆な財政出動で経済を支える必要があります。私が国会でも提唱したMMT(現代貨幣理論)について、党内で議論して頂きたい」
西田氏の提案を政調会長の岸田文雄氏が引き取って言ったという。
「私のほうで勉強会(非公式)を呼びかけます」
MMTは、自国通貨建ての国債を発行している国は破綻することはないという考え方が前提だ。そのうえでデフレから脱却するためには、累積赤字を気にすることなく、財政支出の拡大が必要だとする。現在、積み上がった国債発行残高は約900兆円に上る。財務省はプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化するため、増税を強く求めてきた。
「このため、党の大多数はとにかく財政再建を優先しなければならないと思い込んでいます。しかし、国には通貨を発行する特権があり、いくら国債を発行しても返済できます。物価や賃金が下がり続けているデフレでは財政再建は絶対に不可能です。だから、MMTで景気を拡大すれば、消費も税収も上がる。財政は自然と再建されるのです」