こうして、キャリアを重ねるとともにますます、マスタングへの愛情が増していった。Charは今、自分の楽曲はマスタングがメイン、ほかのミュージシャンのステージではストラトキャスターを弾くことが多い。そういった意味で、6月にCharの2つの面を楽しめるコンサートがあった。東京・蒲田の片柳アリーナで行われた「Music Supreme Char/松任谷由実」だ。Charは、自分のバンドのステージでは「Smoky」や「Shinin’ You, Shinin’ Day」や「Navy Blue」をマスタングで演奏した。そして、ユーミンと共演した「気絶するほど悩ましい」やユーミンがCharのために書いた曲「Night Flight」はストラトキャスターで演奏した。

「ユーミンとの共演は、主に彼女のバンドメンバーとやりました。音程をきちんと決めてね。その環境でマスタングを弾くと、ギターの性質上ほんのわずかなずれが生まれると、バンドを悩ませるかもしれない。僕のバンドで僕の曲をやるときは気にしないけれど、ユーミンバンドとやるときは、メンバーの皆さんに負担をかけちゃいけないでしょ。だから、マスタングではなく、精度の高いストラトキャスターに持ち替えました」

 Char自身のレコーディングでも、ストラトキャスターやテレキャスターと、マスタングを使い分けている。

「デモテープは信頼性の高いテレキャスターを弾いて正確につくる。そして、本番のソロはマスタングを自由に弾く」

 そのマスタングの個性、そして色気がCharだけの音を生んできたのだ。
では、今回開発した新型のマスタングは、特になにを意識したのだろう?

「いろいろあるけれど、フェンダー社に強くリクエストしたのは、ボリュームやトーンのスイッチの位置です。スイッチをピックアップ(弦の下のボディに埋め込まれているマイク)に近づけてもらい、演奏しながら小指でボリュームを操作しやすくなりました。ストラトキャスターのユニットを参考にしてね。デザインはもちろん、音やサイズはマスタング。でも、ストラトキャスターのように扱いやすいのがChar MUSTANGです。鳴りもいいですよ。特に低音が気に入っています」

 11月から全国ツアーがスタートするChar。「Smoky」や「Shinin’ You, Shinin’ Day」を新マスタングのサウンドで聴けそうだ。(神舘和典)

※週刊朝日オンライン限定記事

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神舘和典

神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

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