肺年齢を測る検査 (c)朝日新聞社 (※写真はイメージです)
肺年齢を測る検査 (c)朝日新聞社 (※写真はイメージです)

「老化は呼吸から始まります。呼吸がきちんとできていないと、体の他のところにすぐ影響が出てきます。呼吸は体と心の両方に重要。しかも自分でコントロール可能です。今は寿命と健康寿命に10歳の差があるので、これを縮めてほしいと思います」

 と話すのは、東京有明医療大学学長で呼吸神経生理学が専門の医師、本間生夫さんだ。加齢とともに呼吸をする力は衰えるが、肺を膨らませたり縮ませたりする筋肉を鍛えることが、健康寿命を延ばすことにつながるという。

 日本呼吸器学会は、息を吐き切る力の年齢ごとの平均値から算出した「肺年齢」を肺の健康状態の指標にしている。人間ドックの検査項目に取り入れられることも多い。その肺年齢の元になるのが、息を吐き切る力を数値化した「1秒量」だ。年齢が1歳上がるごとに男性は28cc、女性は22ccずつ落ちる。喫煙者は落ちるスピードがさらに速い。日本医科大学呼吸ケアクリニック(東京)の日野光紀所長は次のように話す。

「胸いっぱいに息を吸って吐き切ったものが肺活量ですが、大事なのは最初の1秒でどのくらい吐き切れるか。これを数値化したのが『1秒量』です。全体の7割を吐き切れないとCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の可能性があります」

 同クリニックには、息切れがする、咳が止まらない、痰がからむといった症状を訴える患者が訪れる。肺がん、肺炎、COPD、ぜんそくのほか、最近はアレルギーが関連するぜんそくの患者が増えているという。

 肺は、あばら骨に囲まれた「胸郭」というスペースに収まっていて、左右合わせて約3億個の「肺胞」という小さな袋が集まってできている。胸が膨らんで空気が入ると、小さな袋の膜から酸素を血液に取り込む。そして酸素と交換された二酸化炭素は、袋が縮むことで体外に排出される。

 息苦しさを引き起こす病気のCOPDは、気管支が炎症を起こし、その先にある小さな袋が壊れてしまった状態だ。袋の出入り口が狭くなっているうえ、フニャフニャと弾力がなくなり、空気が残って排出されにくくなる。呼吸をするたびに排出できなかった二酸化炭素などの悪い空気がたまっていくので、動くとすぐに息が上がる。息苦しいので出歩かなくなり、足腰も弱るという悪循環に陥る人も少なくない。

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