田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 ジャーナリストの田原総一朗氏は、日韓関係が泥沼化した原因について持論を展開する。

【この記事の画像の続きはこちら】

*  *  *

 日本政府は韓国を「ホワイト国」から除外することを決めて、8月28日から実行した。そして、22日には韓国が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定していて、日韓はいわば断絶状態となった。

 こんな状態になったことを日本国民の多くは、韓国の文在寅政権が日本を露骨に敵視して、無理難題をぶつけてきたために、怒らざるを得なかったと捉えている。いや、報復措置ではなく、韓国がずさんな行為を公然と繰り返しているので、輸出国として取らざるを得なかったのだと、日本政府は説明している。

 だが、文政権の行動の根元は、経済悪化による、失業率の上昇にある。それによって支持率の低下に歯止めがかからず、打ち出したのが「徴用工問題」だった。要は、韓国人の被害者感情を刺激しようとしたのだ。

 これは、朴槿恵前大統領が行ってきた政策の否定である。支持率回復のために、前政権の政策を否定し、逆の政策を打ち出すのは、どこの国の首脳もする常套手段だ。米国がTPPを否定し、イランの核合意から離脱したのも、トランプ大統領がオバマ前大統領の政策をことごとく否定し、逆の政策を実施したためだ。

 文政権は最初に、朴政権が日本政府と結んだ慰安婦問題の合意について、「こうした合意を韓国国民は支持していない」などとして慰安婦像を新たに建てた。しかし、それでも支持率は上がらなかったから「徴用工問題」にも踏み込んだのだ。

 繰り返し記すが、根元は韓国の経済が悪化して、失業率が上昇したことなのである。

 ここで、あえて記しておきたい。

 日本政府は、韓国は何かと言うと日韓併合時代の韓国国民の被害を強調するが、こうした問題は1965年の「日韓基本条約」で決着がついているはずだ、と捉えているようだ。

 だが、これは「正確」ではない。当時、韓国は国力が弱く、貧しく、日本に頼らざるを得なかった。韓国が独立国として自信を持ち、日本と初めて政治的に関係改善を図ったのは、98年の小渕首相と金大中大統領による「日韓共同宣言」である。

著者プロフィールを見る
田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

田原総一朗の記事一覧はこちら
次のページ