爆笑しつつ楽しんでいたが、だんだん河崎さん自身も現実の属性やしがらみから解放され、ドラマに入り込んで純愛を追体験していることに気づき、さらにグッと惹かれた。

「性別を超えて入り込めたのは男同士の恋愛を描いているからじゃなくて、男も女も関係なく、純粋に人が人を愛する姿を描いているからだと思うんです。ああ、こういうことがあったら好きになるよなあ、とか。百合(女性同士の恋愛)の研究をしている知人も、はるたんたちの心の動きを女性同士の話として見ても楽しめたと言っていました。つまり、どんな属性の人でも受け入れてくれる。そこも多くの人を惹きつけたのでは」(河崎さん)

 さらに言えば、このドラマでは人が人を愛する気持ちを誰も否定しない。部長に猛アタックされて困惑する春田を、幼なじみのちず(内田理央)は「人を好きになるのに男も女も関係ない!」とたしなめるが、そんなポジティブさは離婚を切り出された武蔵の妻、蝶子(大塚寧々)でさえも持っている。

「本来、蝶子さんはあのドラマの中で一番不幸と言える存在のはず。でも初めこそ取り乱しますが、最終的には夫の気持ちを理解して一番の理解者になる。蝶子さんを始め、みんな前向きに人生を切り開く力を持っていて、ポジティブな人間観で構築された世界なので、見ている側も前向きになれる。そこも大きな魅力ではないでしょうか」(同)

 様々な魅力に惹かれて集まったOL民たち。再び「地獄の1週間」の如く大荒れしないことを祈りつつ、この愛の物語を見届けたい。(ライター・大道絵里子)

週刊朝日  2019年8月16日‐23日合併号