タワンの町にあり、ダライ・ラマ6世(1682~1706)の生誕地とされる、チベット仏教のウルゲリン僧院にお参りに来ていたモンパ族の少女。若い世代は近年、お祭りなどの時に民族衣装を身につけることが多い (撮影/石井真弓)
タワンの町にあり、ダライ・ラマ6世(1682~1706)の生誕地とされる、チベット仏教のウルゲリン僧院にお参りに来ていたモンパ族の少女。若い世代は近年、お祭りなどの時に民族衣装を身につけることが多い (撮影/石井真弓)

 インド最北東部、アルナーチャル・プラデッシュ州の町タワン。そこに暮らす人々の多くはチベット仏教を信仰し、伝統的な民族衣装を纏(まと)う。インド最後の秘境を求める外国人観光客を魅了する町を歩いた。

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 山の峰々が果てしなく続く険しい山道を車がひたすら進む。途中、標高4114メートルのセラ峠を越え、美しい滝を目にしながら、インド最北東部アルナーチャル・プラデッシュ州の秘境に入ったことを実感する。アッサム州を発ち、2日がかりでやっとタワンの町に到着した。

 標高3048メートルの山沿いに広がるこの町にはモンパ族の人々が多く暮らす。出会う人々の顔立ちはチベットの民族に似て、チベット仏教の寺院も多いことに気がついた。

 丘の上に建物群が連なるタワン僧院があった。中にダライ・ラマ14世の肖像があり、祈りを捧げる人がいた。彼が2017年に訪問した時は、はるか遠くから数万人が訪れたという。町にはダライ・ラマ6世の生地とされる寺もある。夕方に訪ねると一人の僧が、6世の手形や歴代ダライ・ラマの肖像画を見せてくれた。静かな時間が流れる中、地元の、高地のシャクナゲのお香の甘い芳香が漂うのだった。(文/石井真弓)

週刊朝日  2019年7月26日号