やはり「親方日の丸」の無責任体制では、世界競争には勝てるはずもない。

 JDIはこれからどうなるのか。国やINCJは、参院選前に国民の批判を浴びないために、問題先送りを狙っているようだ。JDIの関係者も、「当面の資金繰りはなんとかなる」としている。

 ただ、単独での生き残りはできず、このまま時間稼ぎをしてもいずれ行き詰まるのは確実だ。

「債務を整理した上で、会社ごと、あるいは事業ごとに入札で売却先を決めるのがいいと思っています。売却先は国内勢であるべきだとか、日本に工場を維持するべきだといった条件を付けたいのであれば、付ければいい。でも、そうした条件では、応札してくれる企業やファンドは現れないかもしれません。その場合には、一つずつ、優先順位の低い順に条件を外していく。最後は“投げ売り”になるかもしれませんが、資金力があり有能な経営者を擁する海外企業もあります」(町田氏)

 帝国データバンクによると、JDIの下請け先は国内に約2600社もあるという。関係する企業の総従業員数は約15万人にも上る。JDIの経営の先行きは1社だけの問題にとどまらない。多くの中小企業にも大きな影響を与える。

 6月18日の株主総会では経営陣が株主に、「まことに申し訳ない」と謝罪した。月崎義幸社長は9月末の引責辞任を表明している。

 これに対し、INCJや経産省は失敗をきちんと認めていない。安倍晋三首相や世耕弘成経産相ら政治家も、明確な謝罪はしていない。

 私たちの税金はきちんと戻ってくるのか。焦げ付いたときは誰が責任を取るのか。政府は参院選を前に口を閉ざしたままだ。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日 2019年7月5日号