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 平成5年の「あすなろ白書」の出演から人気に火が付き、「ロングバケーション」「眠れる森」「HERO」など大ヒットメーカーとして君臨し続けるのは、“キムタク”こと木村拓哉だ。

「昭和のように俳優が時代を体現できる時代ではない中、現在に至るまでヒット作に出続けている。木村拓哉は平成という時代唯一のスターらしいスターなのでしょうね」(成馬さん)

 昭和の時代には一定数あった“アイドルドラマ”は、平成に入ると一気に減少した。中森さんは、アイドルの時代からアイドル的女優の時代に変化したと言う。

「『イグアナの娘』で菅野美穂が人気になったりなど、“アイドル冬の時代”には、広末涼子や上戸彩などの若手女優がドラマやCMをきっかけにアイドル的な人気を獲得する時代になりました。その後も石原さとみや堀北真希、井上真央、綾瀬はるかなどが続きます」

 平成10年代には、「ショムニ」や「ごくせん」、「女王の教室」など、キャラクター性の強い主人公が人気を集めるようになった。

「『電車男』や『のだめカンタービレ』、オタクだったり変わり者だったり。いっぽうで、『家政婦のミタ』『ドクターX』『義母と娘のブルース』など、非現実的な雰囲気のヒロインものも人気に。漫画原作が増えたこともありますが、極端なキャラじゃないと、連ドラではもたない時代になってきたということかもしれません」(泉さん)

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 平成のヒットドラマには、主題歌と相乗効果をもたらし、曲もドラマも大ヒットしたものも数多い。「東京ラブストーリー」の「ラブ・ストーリーは突然に」(小田和正)、「101回目のプロポーズ」の「SAY YES」(CHAGE&ASKA)、「素顔のままで」の「君がいるだけで」(米米CLUB)、「あすなろ白書」の「TRUE LOVE」(藤井フミヤ)などは、ダブルミリオンを突破している。

 ほかにも「高校教師」の「ぼくたちの失敗」(森田童子)や、「誰にも言えない」の「真夏の夜の夢」(松任谷由実)、「家なき子」の「空と君のあいだに」(中島みゆき)、「Age,35」の「いいわけ」(シャ乱Q)など、ドラマの内容やシーンとともに強く記憶に残るものも多い。音楽評論家の原田和典さんは、こう語る。

「平成前半のドラマ主題歌は、イントロがものすごく印象に残る曲が多いです。『ラブ・ストーリーは~』のチャカチャーンというギター、『SAY YES』の最初のジャーン、『いいわけ』のジャジャッジャジャジャン。ドラマのクライマックスとともに、流れるその最初の1、2秒で、空気が一変する。歌声から入った場合、言葉になっちゃうからむしろドラマのストーリーと混ざって弱くなる。インパクトのあるイントロがまずくるから、印象深かったんです。楽曲の魅力と効果的に使うドラマ側の演出。その相乗効果があったと思います。CDはそれほど売れない時代になりましたが、星野源の『恋』や米津玄師の『Lemon』のように、SNSや動画サイトで盛り上がるなど、今の時代に合ったドラマ主題歌のヒットの形は、確実に生まれてきています」

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