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 平成23(2011)年には地デジへの完全移行が行われた。テレビの視聴スタイルは、ますます多様化した。

「録画やDVD、配信で見る層も今は増えている。SNSでの盛り上がりも大きな指標となるようになりました。視聴率で単純な比較ができない時代になってきました」(成馬さん)

 泉さんも、ドラマはオンタイムで見る時代ではなくなってきていると語る。

「大きなスポーツの大会などはオンタイムで楽しみたいと思いますが、ドラマは自分が好きなときに、録画や配信など、好きなスタイルで楽しむ時代になりました。ゴールデンも深夜も放送枠は関係ない時代に。だからこそ『おっさんずラブ』のように放送枠が深夜で視聴率も低かったのにSNSで盛り上がるなど社会現象化するドラマも出てくるようになりました」

 平成25(13)年に大ヒットした「半沢直樹」以降、池井戸潤原作のTBSドラマシリーズも中高年を中心に安定した人気だ。

 泉さんの解説。

「『半沢直樹』は勧善懲悪の時代劇的な雰囲気がありましたが、『下町ロケット』や『陸王』などは、昭和の青春学園モノのニオイを感じます」

 みんなで一致団結してライバル会社に勝とうという作りは、オーソドックスな昭和のスポーツ青春ドラマのリメイクと指摘する。

「演出家の福澤克雄さんが、体育会系ラガーマン出身というのも作用しているんじゃないかな」(泉さん)

 平成後半の高視聴率ドラマには、高年齢層の支持が高いものが多い。その好例が、「相棒」や「科捜研の女」、「ドクターX」など、刑事モノや医療モノを定番シリーズ化させることに強いテレビ朝日だ。

「年功序列、終身雇用の昭和的企業のあり方から、外資が入ってきたり、正社員と派遣社員と、立場もバラバラになってきた。視聴者が共有できる会社の価値観もバラバラな中では、刑事ドラマや医療ドラマといった、固定された組織に限定することで、人間ドラマが描きやすくなっている面はありますね」(成馬さん)

 ヒロインのルックスも、その層にウケる女優が増えていると中森さんは言う。

「“平成生まれの昭和顔”というのがキーワードです。有村架純や広瀬すずなどが代表的ですね。高年齢層が安心できる昭和顔なんです」

 まもなくやってくる新元号の時代。また新たなスタイルのドラマが人気を獲得するだろうか。(本誌・太田サトル)

週刊朝日  2019年3月15日号