大量死が見つかったハチの巣箱の内部。ネオニコチノイド系農薬の影響が懸念されている (c)朝日新聞社
大量死が見つかったハチの巣箱の内部。ネオニコチノイド系農薬の影響が懸念されている (c)朝日新聞社
発達障害で特別支援教育(通級)を受けている児童生徒数 (週刊朝日 2019年3月15日号より)
発達障害で特別支援教育(通級)を受けている児童生徒数 (週刊朝日 2019年3月15日号より)
農薬使用量の国別の比較/自閉症、広汎性発達障害の国別の有病率 (週刊朝日 2019年3月15日号より)
農薬使用量の国別の比較/自閉症、広汎性発達障害の国別の有病率 (週刊朝日 2019年3月15日号より)

 発達障害という言葉はすっかりおなじみになった。気が散りやすかったり、他人と意思疎通しにくかったり、そんな子どもが増えている。原因として注目されているのが農薬との関係だ。食べ物に含まれる化学物質が、子どもの脳の発達に悪影響を与える……。作家・ジャーナリストの青沼陽一郎氏がレポートする。

【発達障害と農薬の関係は?】国別の農薬使用量と発達障害の国別の有病率の比較データはこちら

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 発達障害の子どもが増えている。文部科学省が2012年に公表した調査によれば、全国の公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、コミュニケーションがうまく取れないなど発達障害の可能性がある子どもは6.5%、15人に1人となっている。

 発達障害は、生まれつきの脳の発達の異常に基づくもので、いくつかのタイプに分けられる。13年に改訂された米国の精神医学界の診断基準(DSM‐5)では、それまでの広汎(こうはん)性発達障害やアスペルガー症候群を含めた「自閉症スペクトラム障害」と、「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」の主に三つに分類される。

 文科省の資料によると、これらの発達障害で特別支援教育(通級)を受けている公立小中学校の児童生徒数は、06年度に6894人であったものが年々増え続け、17年度には5万4247人と8倍近くにまで達している。驚くべき数値だ。

「先生たちは疲弊し、授業もままならない状況になっています」(教育関係者)

 発達障害の原因について、かつては、遺伝による要因が強いとされてきたが、現在では環境的な要因が注目されている。環境脳神経科学情報センターの木村-黒田純子副代表(以下黒田氏)が解説する。

「自閉症は1943年に米国の医師カナーによって報告されました。その時には、子どもを冷たく突き放す“冷蔵庫マザー”による育て方の悪さが原因だとみられていました。77年には、英国の医師ラターの疫学論文によって、自閉症は遺伝性によるものが92%と報告されます。この論文の調査、診断手法には問題が多かったのに過大評価され、原因遺伝子の探索競争が過熱します。ですが、関連遺伝子は報告されても、単一の原因遺伝子は見つかりませんでした」

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