政界で「一強政治」を実現した自民党。資金力は豊富で、それを象徴する出来事があった。入手した複数の大手行の内部文書によると、初めて野党に転落した1993年に、選挙資金として銀行団から借り入れていた100億円を、完済していたのだ。融資は事実上無担保で返済期限もはっきりしないなど、借り手に“おいしい”条件だった。
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選挙資金を巨額融資でまかなってきた自民党だが、返済資金はどこから来るのか。主なものは企業から集めた献金だ。税金をもとにした政党交付金によって、党の資金力が全体的に回復したことも後押しした。
まずは献金についてみていこう。自民党の政治資金団体の「国民政治協会(国政協)」が17年に集めた企業・団体献金は約24億円。安倍首相のもとで政権に復帰した12年から6年連続で増えている。大手自動車メーカーや素材メーカー、大手ゼネコン、その業界団体などの献金がめだつ。アベノミクスによる円安や公共事業などで、恩恵を受けているところだ。「安倍一強体制」とも言われるなか、多額の献金をするのは自社や業界に有利な政策を進めてほしいとの思惑が透けて見える。
融資している大手行も企業献金を続けてきた。100億円を融資した93年には、当時の都市銀行8行(三菱、三和、東海、住友、さくら、第一勧業、富士、大和。現在は三菱UFJと三井住友、みずほ、りそなの4銀行に統合)が計約6億5千万円を出した。その後も、94年は計約3億7千万円、95年は計約3億1千万円、96年は計約1億4千万円、97年は計約1億4千万円などとなっている。
大手行は金融危機で公的資金の注入を受けたことで、98年にいったん献金を中止する。ある大手行の首脳はその理由をこう語っていた。
「公的資金で救われた大手行が与党に献金するのは、国民に誤解を与える恐れがある。政治とは適切な距離を取ることも大事だ」
ところが、大手行は安倍一強体制が強まる15年に献金を再開した。みずほと三井住友、三菱東京UFJは、15~17年に毎年各2千万円を出している。93~97年までの献金も合わせると、大手行からの献金総額は17億円を超えるとみられる。