なぜ東大の推薦入試に強いのか。進路指導担当者は「卒業研究」への取り組みを挙げる。2年の秋に研究テーマを設定し、3年の7月に論文としてまとめ、発表。広島大の大学院生らから研究を進めるための助言を受ける機会もある。

「推薦入試への出願が決まった生徒は、教員のアドバイスを加え、提出する論文の精度を上げます。卒業研究への取り組みが合格につながっているのは間違いありません」(進路指導担当者)

 京大の特色入試に強い高校として、西京や堀川、天王寺、北野といった、教育改革で大学の合格実績を伸ばす公立の進学校が挙げられる。これらの高校は京大の一般入試でも多数の合格者が輩出している。

 この中でも特に特色入試に強いのは、西京だ。もともと商業高校だったが、京都市の教育改革で、03年に「エンタープライジング科」を設置し、専門学科高校に変わった。

 強さの秘訣(ひけつ)は、深い学びを提供する独自教育にある。1年から主体的な思考を訓練する授業が用意され、海外のフィールドワークにも出かける。2年には国際学ゼミや経済学ゼミなどに分かれ、専門的な研究に取り組み、グループや個人で論文にまとめる。こうした教育は、大学の学びと共通する部分が多く、特色入試の強さにつながっているようだ。

 その他の難関国立大の合格高校を見てみると、地元名門校の存在感が際立つ。東北大では、仙台第二、盛岡第一などが毎年多くの合格者を出し、この4年間で70人を超える。

 名古屋大では向陽、菊里、西春など、九州大は城南、西南学院、修猷館などだ。大学通信常務の安田賢治さんはこう分析する。

「東大や京大以外の旧帝国大の一般入試では、公立高校が多数の合格者を出してきたが、推薦でも強いことがはっきりしてきた。大学側にとっては地元の優秀な学生をAOや推薦入試で、早い段階で獲得することができる。受験生にとっても受験機会が増えるほか、早い時期に合格する可能性があれば、メリットと言えるでしょう」

 難関国立大のAO・推薦入試はまだ緒についたばかりだ。東大では推薦入試1期生が卒業する5年目から制度の変更を検討することを明言している。今後、難関国立大はどのようにスーパー高校生を確保していくのか、各高校や受験生はどのように対応するか、注目したい。(本誌・吉崎洋夫、緒方麦)

週刊朝日  2019年3月1日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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