ユニクエストによれば、遺体は斎場・葬儀社に併設されている専用安置施設で火葬時間まで待機するケースが7割に上る。マンションなど住環境の変化で、居住空間に「死」を迎え入れることが難しくなってきているためだ。斎場・葬儀社の安置施設では、5万円程度の「付き添い料」を支払えば、夜中も故人に付き添えるよう、部屋を用意してもらえるサービスもある。自宅で安置は難しいが、一晩遺体に付き添っていたいという人におすすめだ。

 さらに今、時期や地域によっては火葬場が不足する例もあり、火葬や葬式まで遺体を安置させる目的の“遺体ホテル”と呼ばれる民間遺体保管所も増えている。24時間営業の場合が多く、遺族がいつでも面会することができる。ただ、基本的には旅館業法のホテルとしての許認可は受けていないため、亡くなった人に一晩じゅう付き添うことはできない。

 終活や葬式の相談・施行などを行う「葬儀を考えるNPO東京」代表の高橋進さんがすすめるのが、安置場所を自宅にすることだ。

「故人を囲んで家族でゆっくりと過ごせるのはもちろん、安置中に知人などに弔問に来てもらうこともできます」(高橋さん)

 火葬前に弔問に来てほしい人がいれば、死亡の報告とともに、「○日後の○時に、火葬場に出棺するので、故人に会いに来てほしい」と電話などで案内する。マンションなどでは遺体の安置は厳しいと考えがちだが、「9畳もあれば棺を置いても20人は入れます」(同)。自宅安置中に僧侶を呼び、読経をしてもらっても良い。

【3】火葬後に弔問を受ける骨葬パターン
 合理的なのが、直葬の後に弔う方法。火葬して骨にしてから、友人や知人の弔問を受け付ける「骨葬」というやり方だ。

 自宅がマンションなどであれば、棺を運ぶ際、エレベーターにのせなくてはならないなど、自宅安置には物理的な不安もつきまとう。骨葬は、故人の見送りは火葬前ではなく、火葬後に骨の状態で行うという考え方。「お焼香」と同じと考えれば、家族の負担も小さい。

「お骨になってから弔っても良いのです。葬儀が終わってから出棺して火葬するという流れが、そもそも非効率。骨壺ならば、場所もとらず、運搬等の負担も軽減されるし、自宅に弔問客を呼ぶハードルもぐっと下がります」(『葬式は、要らない』などの著書で知られる宗教学者の島田裕巳さん)

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