自宅に弔問客を呼ぶ場合には、期間を区切ると良い。でないとお焼香をあげたいという人が延々とあらわれ、そのたびに遺族は対応に追われるほか、悲しみを思い出すことにもなる。例えば、死の報告とあわせて「○月○日までをお別れの期間にします。都合がつけば、弔問にいらしてください」と案内する。期間に余裕があれば案内状を出し、そうでなければ電話で案内しても良い。

 予算や、故人の付き合いの範囲、家族の意向などから直葬のプラスαの部分は柔軟に変えられる。どこまで簡素化し、どう弔うか。死後慌てないためにも、家族で話し合っておくと良いだろう。

 古くからのしきたりや慣習が強い地域などでは、まだまだ受け入れられづらい部分もある。また、現役世代の場合は、「付き合い」の範囲が広い。人によっては一般的な葬儀のほうがいい場合もある。

 島田さんによれば、葬式の規模を考える上で一つの目安になるのが、年賀状の数だという。葬式をあげた場合に参列する可能性があるのが、「年賀状のやり取りがある人の中で、居住地が近い人」。その中から、約3分の2が参列する可能性があると考えると良い。「年賀状のやり取りがある人の中で、距離が近い人」が50人だった場合には、3分の2の33人程度が参列する可能性があるということになる。

 一般的に直葬は、参列者の目安が10人以下の場合に選ばれることが多い。一般葬の目安は、知人や友人を呼ぶなら100人以下、家族葬は30人以下。葬儀に呼んでほしい人をリストアップし、家族に渡しておくことが大切だ。

 浸透しつつある直葬。その昔、白洲次郎の葬儀も似たような形だったとか。徹底した合理主義者だった生前の白洲は、人が義理で葬式に来るのを嫌い、正子夫人にも「葬式をしたら化けて出るぞ」と脅かしていたという。

 白洲の遺言は「一、葬式無用 一、戒名不用」。白洲の葬儀は、遺言どおり遺族が集まって酒盛りをしただけ。正子夫人が亡くなった際も、葬式や告別式は行われなかったそうだ。

 信念で無駄を省いた葬儀を選ぶ時代。白洲の「葬式無用」スタイルは、時代の流れの予兆だったのかもしれない。(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2019年2月15日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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