2022年の法人統合に向けた合意書を締結した小樽商科大、帯広畜産大、北見工業大の3学長 (c)朝日新聞社
2022年の法人統合に向けた合意書を締結した小樽商科大、帯広畜産大、北見工業大の3学長 (c)朝日新聞社
大学大再編シナリオ地図 (週刊朝日 2019年2月1日号より)
大学大再編シナリオ地図 (週刊朝日 2019年2月1日号より)
入学定員充足率 2017年→2040年 (週刊朝日 2019年2月1日号より)
入学定員充足率 2017年→2040年 (週刊朝日 2019年2月1日号より)

 国立大の再編の動きが目立ち始めた。18歳人口の減少を背景に、定員充足率の減少、運営費交付金の減額により厳しい経営が予測されるからだ。大学関係者や専門家の話からその動向を紹介する。

【専門家らのシミュレーションを元に作製 大学大再編シナリオ地図はこちら】

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 旧帝大に競合する大学を目指す動きもある。

 北海道で進んでいるのは、小樽商科大と帯広畜産大、北見工業大が統合する「北海道連合大学機構」(仮称)構想。いずれも単科大だが、商業、農業、工業が連携することで、北海道経済を活性化することを期待されている。こちらの動きも「3大学に限るものではない」と含みを持たせている。

 これについて教育ジャーナリストの小林哲夫さんは「第二北海道大学構想がある」と見る。北海道教育大と室蘭工業大、旭川医科大を含めた6単科大の統合で、北大に伍(ご)する大学をつくるという構想だ。実はこの構想も02年に具体的に議論された。

 当時、小樽商科大副学長で議論を取りまとめた山本真樹夫・帯広畜産大監事によると、6大学で共通する事務管理部門を整理・統合することや、教養教育を遠隔授業システムで共通化することなどの案がまとめられた。だが、動画や音声など技術が追いつかず、遠隔地をつなげた授業は困難と見なし、6大学の学長が時期尚早と判断したという。

「北海道は北大がガリバーで、その周りに6人の小人がいるイメージ。それでは競争にならず、本気で北大に対抗できる体制をつくる意気込みで議論をした。現在は技術が進み、ハードルは下がった。残りの3大学が加わることは、北海道にとって歓迎すべきことでしょう」(山本監事)

 東京でも東大に対抗しようとする議論がある。一橋大、東京工業大、東京医科歯科大、東京外国語大、東京芸術大の5大学による「第二東京大学構想」とも言われた5大学連合構想だ。東京外大学長の中嶋嶺雄氏(故人)が提唱した構想で、東大への対抗だけではなく、世界に通用する大学をつくる狙いがあったようだ。

 一法人5大学の統合を模索していたが、その後、一法人化は断念し、東京芸術大を除く4大学で「4大学連合」を結成。各大学が授業の共同コースを設け、編入学、複数学士号創設といった連携でつながっている。東京外大前学長で、4大学連合の連携を進めた亀山郁夫・名古屋外国語大学長はこう述べる。

「カリスマ的な学長が現れれば、統合はあり得る。4大学に限らず、東京芸術大や東京農工大、電気通信大、東京学芸大を巻き込んでもいいのではないか。統合できるところから始めていけばいい。文部科学省や財務省主導ではなく、ビジョンを持った学長が主導するべきです」

 九州では「第二九州大構想」。北九州市内にある国立の九州工業大と、公立の北九州市立大、九州歯科大、私立の産業医科大の4大学だ。九州大に匹敵する総合大学をつくることで、新しいビジネスが興り、若者が定着することを期待している。16年に北九州市議会で統合を提案した村上幸一市議はこう言う。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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