ヒットメーカーのクドカン。大河で持ち味を生かせるか(c)朝日新聞社
ヒットメーカーのクドカン。大河で持ち味を生かせるか(c)朝日新聞社

 ビートたけし、小泉今日子、役所広司、星野源、森山未來、松坂桃李、生田斗真、神木隆之介、橋本愛、川栄李奈……。

 日本でのオリンピックをテーマに、中村勘九郎と阿部サダヲのW主演、脚本は“クドカン”宮藤官九郎がつとめるNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」。1月6日に放送された第1話では豪華キャストが次々と登場したものの、平均視聴率は15.5%(ビデオリサーチ調べ関東地区)で、初回として歴代ワースト3位となった。

 上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、視聴率が振るわなかった理由を分析する。

「いつもの戦国や幕末・明治維新と違う近現代を舞台にした大河ドラマ。大河ファンの中には、今回はパスという人も少なからず存在します」

 碓井教授は、「いだてん」は、クドカンがかつてNHKで手掛けたドラマ「あまちゃん」と同じく「異端者」だと位置づける。

「社会現象になった『あまちゃん』は、朝ドラの保守本流のスタイルがあるからこそ、その対比から光ったわけで、視聴率自体は決して高くありませんでした。『いだてん』も、『大河らしい』ルールや既成概念にとらわれず、異端者として暴れてもいいぞという作品。ドカーンと高視聴率とまではいかないでしょうが、『異色の大河』として大河におけるダイバーシティー(多様性)を推進してくれるのではないでしょうか」

 ドラマ評論家の吉田潮さんは、一回目を「豪華な前菜のよう」と表現した。

「打ち上げ花火としてはよかった一方で、あまりに登場人物が多くて、『主役は役所広司?』みたいな感じに、どの人物の成長や物語を見守ればいいのか分からなかった。視聴者を散漫にさせるという『新機軸』なのかと(笑)」

 しかし、「初回でシャッター下ろしちゃうともったいない」と吉田さん。

「脇のキャラクターにもいろんな“濃い”アナザーストーリーがあって、それが重なり合って物語が進んでいくのがクドカンの持ち味。それを予感させるキャラクターはたくさんいましたので、それぞれどう凝縮させていくか楽しみですね」

 週刊誌の連載コラムでクドカン自身が<むしろ2話から見た方が、スムーズに物語が理解できる構造になってます>と書いた通り、本格的に物語が動きだすのは2話からだ。前菜を超えるメーンディッシュが楽しみだ。

(本誌・太田サトル)

※週刊朝日 1月25日号