感染症屋が語るワイン造り 微生物が「恩恵」にも「邪魔」にもなる理由とは? (2/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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感染症屋が語るワイン造り 微生物が「恩恵」にも「邪魔」にもなる理由とは?

連載「ワインは毒か、それとも薬か」

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岩田健太郎週刊朝日
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

動物の場合血液の中にいる細胞、白血球が微生物と戦う。調べてみると植物にも病気と戦う力はあるどだそうだ(写真:getty images)

動物の場合血液の中にいる細胞、白血球が微生物と戦う。調べてみると植物にも病気と戦う力はあるどだそうだ(写真:getty images)

 ブドウにはウイルス感染もあり、リーフロールウイルス、ファンリーフウイルス、フレックウイルス、コーキーバークウイルスなどが感染を起こす。動物の場合、ワクチンなどでウイルスに対抗することも可能だが、動物のような免疫機構をもたない植物ではこうはいかない。ウイルスに感染していないウイルスフリーの苗木を使う、というやや消極的な方法で対抗しているそうだ。
 
 真菌(カビ)感染も重要だ。
 
 ブドウを襲うカビには、例えばベト病がある。これはPlasmopara viticolaという糸状菌感染だ。19世紀後半に見つかり、ブドウに白いカビが生える。このカビにはボルドー液という硫酸銅と生石灰などをまぜた液の散布で対応する。

 糸状菌という言葉を使った。カビ(真菌)は糸状菌と酵母様真菌に大別される。

 むっちゃ、簡単に説明すると、前者は肉眼的にカサカサとしており、顕微鏡で見ると菌糸を伸ばしている。糸状菌で有名なのは「水虫」の原因となる白癬菌だ。「もやしもん」界隈では有名なオリゼー菌(A. oryzae)も糸状菌だ。後者は肉眼的にテラテラしており、顕微鏡で見ると丸いか、ちょっと飛び出た「仮性菌糸」を出している。例えば手近なところでは「パン酵母」(S. cereviciae)がこれに当たる。
 
 灰色カビ病はBotrytis cinereaという灰色の真菌で、イプロジオン水和剤などで対応する。このB. cinereaは実は良い面もあり、完熟ブドウに入り込み、水分を蒸発させることで糖分などを凝縮させる。これがいわゆる「貴腐」(noble rot, pourriture noble)。極上の甘口ワインができる。
 
 ウドンコ病もErysiphe necatorという真菌が原因の病気で、白いうどん粉のような粉がつく病気だ。これも硫黄の入った農薬を散布して対応する。
 
■悪いイメージがついて回る「農薬」も「薬」なのだ

 晩腐病(おそぐされびょう)という病気もあり、これもGlomerella cingulataという真菌の感染症だ。日本ではもっとも被害が大きいのはこの晩腐病といわれる。完熟期に被害が最大なので、晩腐病と呼ぶ。ベンレートの散布などが有効とされる。
 


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