有名な俳優、芸能人であればまだ報道等で表沙汰になるが、無名であると、立場が弱いこともあり、泣き寝入りするケースが多いという。

 所属事務所との契約が理不尽だったり、撮影の現場などの労働環境が過酷であった場合、ストライキなど問題提起する行動や団体交渉をすれば、という声も出るだろう。しかし、俳優の置かれてる立場は、少し特殊だ。

 俳優や声優の協同組合である「日本俳優連合(日俳連)」では、芸能界における契約、未払い、労務などに関する問題の解決に取り組んでいる。映画監督であり、同協会の高瀬将嗣常務理事は、俳優を含めた芸能人たちの立場の難しさをこう指摘する。

「俳優が個人事業主なのか労働者かという点です。例えば、俳優の雇用者は誰か。作品ごとの映画会社、テレビ局、または所属プロダクションなのか。ところが、各々のほぼ共通認識は俳優の雇用主ではないという立場をとっていること。製作会社はプロダクションに発注しているという認識を有し、一方、プロダクションは俳優の代理人で対等の契約関係という見解です。では、俳優は誰に雇われているのか。『雇われていない=労働者でない=労災の対象にない』となり、現場でのケガは自己責任で処理しなければならなくなる。小栗さんの労働組合に関する発言が話題になりましたが、こうした立場に対する危惧の現れではないでしょうか」

 つまり、俳優は個人事業主として会社とは業務委託契約している対等関係であって、労働基準法で定めてあるような、使用従属性、指揮監督下の労働にはあたらず、労働者(社員など)ではないということだ。

 個人事業主とされると、労働組合を立ち上げるのは難しくなり、自分の身は自分で守るしかなくなる。立場の弱い無名の俳優は、なおさら厳しい境遇となる。

 日俳連に所属する俳優の森崎めぐみ氏は、日本の芸能界が特殊だとする。

「そもそも俳優の労働組合がないのは、日本くらいです。海外では各国に複数のユニオン(労働組合)が実在しています。私ども日俳連が所属する国際俳優連合(FIA)の会員ユニオンだけでも、例えばカナダは3つ、アメリカには2つが属しています。さらに、FIAに所属していないユニオンもあります」

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小栗が労働組合に関心を持つ背景には…