保護貿易主義など『トランプ政権の迷走』、『中国経済の想定以上の減速』、『残業規制の強化』による残業代の大幅カットといったリスク項目を挙げ、その景気低迷圧力を合計すると、GDPの見込み下落率はマイナス3.6%になるという。リーマン・ショックのときの下落率が3.7%だから、合わせ技でリーマン・ショックに匹敵する経済被害が生じるのです。
さらに研究機関が取り上げなかった懸念材料としては、東京五輪関連の諸投資が19年から終わりを迎えます。加えて日本経済には14年増税の悪影響が残っています。19年の経済環境は非常に厳しく、増税のタイミングとしては最悪です。断行されると、取り返しのつかない事態となることが真剣に危惧されます」
──増税への対策は?
「重要なのは増税の影響をゼロにする対策だけでは、いまも進むデフレ・スパイラルは止まらないということ。デフレを終わらせるには増税の凍結に加え、単年度で10兆~15兆円の大型経済対策を2年程度続ける必要があるでしょう。万一、増税をするのなら、同規模の対策の4~5年の継続が必須となるでしょう」
──消費税減税という選択肢もあり得るか?
「もちろんそうです。8%から3%に戻せば、デフレ脱却ができる可能性があります。物価が確実に5%下がりますから、実質消費も5%上がる。日本人は年間約300兆円消費しますから、それだけで15兆円上がる。たくさんお金を使うと給料がアップして、実質賃金も増える。会社も活況を呈するから投資も始まります。トータルで20兆~30兆円の経済波及効果が得られるでしょう。
デフレ脱却には、消費税を減税すると同時に法人税を増税するのが得策です。法人税を支払うことを嫌う各企業が投資や賃上げを加速するからです。高額所得者への課税強化による税収確保も重要でしょう。
私はデフレからの脱却の王道は税制改革だと思っています。何といっても消費増税のせいでデフレと財政悪化がもたらされたのですから。いまからでも遅くありません。10%消費増税は止められるのです」
(構成/本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2019年1月4‐11日合併号