最近、大声で鳴いたり、粗相をしたり、飼い猫の行動がおかしい……。それは認知機能の低下かもしれない。加齢に伴う変化であるため「完全に治す」ことは難しいものの、環境などを整えることで問題行動を軽減できる場合もある。ペットの高齢化で今注目される「行動療法」について、獣医師に聞いた。
【こんな行動変化に要注意!猫の認知症“予備軍”チェックシートはこちら】
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「うちのコ、13歳なんだけど最近トイレを失敗するの。今までこんなことなかったのに、ボケちゃったのかな」
猫の高齢化が進むなか、こうした悩みを抱える飼い主が増えている。猫が年を取ってから「夜鳴きをする」「徘徊をする」など行動が変化し、猫も飼い主もストレスを抱えてしまう。
「加齢とともに猫も人間同様、体や心に変化が起こります。それらが問題行動として表れてくるのです」
と、獣医師の藤井仁美さん(53)は話す。下記のチェックシートは高齢猫によく見られる行動の変化だ。そのなかには「高齢性認知機能不全」、いわゆる「認知症」の症状も含まれていると藤井さんは言う。
「加齢にともなう認知機能の低下のほか、最近の研究では人間のアルツハイマー型認知症と同じような脳の病変が発見されたという報告もあります」
しかし猫の認知症はまだ研究段階。診断を確定することも、人間と同様、薬で「治す」ことも難しい。
それでも対処法はある。藤井さんがペットの問題行動に取り入れているのが「行動療法」だ。飼い主へのカウンセリングやペットの観察によって原因を探り、生活環境を整えたり、不安やストレスへの対処法を見つけたりする。藤井さんは日本獣医動物行動研究会の獣医行動診療科認定医でもある。
ただ、注意が必要なのは、“脳や心の問題”のように見えても、体の病気が隠れている可能性があること。藤井さんも、まずは「問診」や「身体検査」に加え、各種検査で身体的な病気の可能性を調べることが重要だと強調する。
例えば、過剰に鳴く原因は「痛み」によるものかもしれないし、猫の行動変化は高血圧から起こることも多い。できれば病院で「身体検査」や「画像診断」で頭(口の中なども含む)から首、背中、足や尻尾の先まで全身の痛みの有無を確認してもらい、「血圧」も測ってもらうといいだろう。