取引が成立すると、義務ではないが例会で「成約報告」をすることができる。利益の一部を慶應に寄付する慣例もある。

「20年以上、成約報告は途切れず続いています」(事務局の佐藤正人氏)

 会員は増え続け、現在約870人。例会の参加者は70~80人にもなる。

 新しい三田会も次々に生まれている。昨年できた「ファイナンシャル・プランナー(FP)三田会」も、その一つ。三田会結成を望む長老の声に加藤惠子代表が応えた。テレビ出演で知られる藤川太さんが中心メンバーの一人だ。

 44人と小所帯で、人集めが大変なようだ、会社勤めの企業内FPは大勢いるはずだが、だれが資格を持っているかは調べようがない。設立時も独立系FPのホームページを調べて塾員を特定、勧誘していった。

 親睦と学びが二本柱。FP力向上のための勉強会を今月から始めた。会員の営業強化に役立てばと、ホームページには自己PRできるコーナーも設けている。

 連合三田会には登録していないが、会員数約4500人と大勢力を誇るのは「Facebook三田会」だ。今月7日には、塾員ならだれもが知っている三田の「つるの屋」で忘年会が開かれた。

「つるの屋閉店」の情報を聞き「最後」と思って選んだが、店主によると「噂を信じないでください。変わらず営業を続けます」。

 幹部の松延健児さんによると、ネットらしい「フラットさ」が特徴という。

「皆が『さん』づけで呼ぶなど先輩がいばらない三田会です。有名人の会員もいますが、特別扱いはしません。昔の話が出ないところが他と違います」

 会員のみの非公開ページ。「なりすまし」が多く、入念な入会審査が行われる。投稿は「慶應関係」に限られる。野球やラグビーの慶早戦(慶應では「早慶戦」とは言わない)になると、観戦中の会員による「実況中継」で盛り上がるという。

 自分のタイムラインには流したくない「慶應ネタ」を流せるのがいい、と語る会員がいた。

「月曜日に会社を休んで慶早戦を見に行くときでも、気兼ねなく発言できます」

 改めて三田会全体を眺めると、「三拍子」そろった強さに気づく。創設者の教え、集まるための「インフラ」、そして「継続は力なり」で長年かけて築かれたシステムが「慶應愛」あふれる塾員を「再生産」していく……最強の組織は、まさに盤石なようだ。

週刊朝日  2018年12月28日号