年度三田会の幹事経験者が言う。

「10年に1回、同期が結束を確かめ合うための機会が与えられているのです。役回りも決まっています。卒業30年がお祭り全体を仕切るメイン当番で、20年は30年のお手伝い、10年は見習いみたいな感じ。40年は名誉職ですね」

 これに学校主催の行事が絶妙に絡む。卒業25年になると卒業式に招かれるのだ。

「それに合わせて、年度三田会は大同窓会パーティーを都内のホテルで開きます。同時に慶應のために寄付金も集める。つまり、この時期に年度三田会が再整備されるわけです」(幹事経験者)

 再整備とは「名簿の穴」を埋める作業にほかならない。別の年度三田会経験者が言う。

「20年の当番が終わると同時に、『25年には大パーティーがある』という告知を口コミで広めます。3年ぐらい前に名簿整備のための組織を立ち上げ、住所が実家のままになっていたりする『行方不明者』を一人ひとりつぶしていきます。最終的にかなりの現住所がわかります」

 塾員の住所判明率は約82%。その高さは、この時期の名簿整備が大きく貢献しているに違いない。

 ともあれ卒業20年から30年にかけて3回、大きなイベントが続く。社会の中核を担うのと同じ時期に、同期会の結束を強める機会が与えられるのだ。

 もちろん、その機会を生かすには年度三田会が機能していなければならないが、それもまた「慶應システム」とでも言えるものが働く。鍵を握るのは「22.4%」(「2019大学ランキング」)と、高い内部進学率である。

 多くの塾員が年度三田会の原動力として小中高からの内部生の存在をあげる。

「代表になるのは幼稚舎出身者が目立つ」「人を集めるには、やっぱり内部生が強い。慶應生活が長く、知り合いが多いですから」「慶應女子出身の専業主婦で仲間づくりにマメな子を選ぶと、うまくいく」……。

 連合三田会の当番には数百人単位の実行委員が必要だ。25年の大パーティーには1千人を超える同期が集まる。広く人を集めようとすると、内部生の力が必要になるのだ。もちろん、外部生で重要な役割を担っている人も大勢いるが、中核部隊に占める内部生の比率は内部進学率よりはかなり高いようだ。

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