この節目に向け、ほかにもやるべき手続きはたくさんある。一つひとつ着実に進めていこう。

 残された家族はまず、死亡後7日以内に死亡届を市区町村に届け出る。同時に火葬許可の申請も必要だ。亡くなった人がもらっていた年金の受給停止手続きもあり、厚生年金は死亡後10日以内、国民年金は14日以内にする。国民健康保険の資格喪失届、介護保険の資格喪失届、世帯主の変更届は、いずれも14日以内に提出しなければならない。

 この間、知人に訃報(ふほう)を知らせ、通夜や葬儀の手配もある。無事に葬儀が終わったら、携帯電話やクレジットカードなどの名義変更・解約、運転免許証やパスポートの返納などもやっておこう。医療費の精算や生命保険の受け取り手続きも忘れてはいけない。

 これらを片付けつつ、相続に取り組む。まずは法定相続人の確定だ。相続人の範囲は民法で定められていて、配偶者や子ら親族が対象になる。養子や婚外子も含まれるので、亡くなった人の戸籍謄本を取り寄せて調べる。

 その上で遺言書があるかどうかや、財産の状況を把握する。預金や投資信託などの金融商品をはじめ、不動産や貴金属、美術品まですべてをリストアップ。住宅ローンや借金の連帯保証の有無など、マイナスの財産も調べる。引き継ぐのは次のQ&Aにあるように、プラスの財産ばかりではないためだ。

Q:相続の「限定承認」とは?

A:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法
 亡くなった人が不動産などの財産がある一方で、借金も大きそうな場合はどうすべきか。プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」という方法がある。相続人全員の合意が前提で、亡くなってから3カ月以内に家庭裁判所に申請する。

 清算の手続きが面倒なため利用者は少ないが、財産の規模がはっきりしない場合は検討してみよう。プラスよりもマイナスが大きいと後からわかっても、差額のマイナス部分だけ引き継ぐことはない。「先買権」という制度により、適正な価格を支払うことで、自宅など特定の財産を取得することもできる。

 マイナスが上回るとはっきりわかっている場合は、財産をすべて引き継がない「相続放棄」を選ぶ。こちらも3カ月以内に家庭裁判所に申請する。

次のページ