写真はイメージです (写真:GettyImages)
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科研費増加比ランキング (週刊朝日 2018年12月14日号より)
科研費増加比ランキング (週刊朝日 2018年12月14日号より)

 もうすぐ大学受験シーズンがやってくる。大学選びの指標となるのは「偏差値」という学生も多いと思うが、「医学部回避」「地方」をキーワードに、新しい大学選びを考えてみたい。

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 国公立大(前期)の医学部志願者が4年連続で減少し、成績優秀な学生が医学部を目指す流れが変わりつつある。その一方で、AIなどの分野を研究する情報系の学部や学科を志望する受験生が増えている。河合塾教育情報部チーフの岩瀬香織さんは最近の受験者動向を、こう分析する。

「首都圏では、医学部ではなく、他の理系の難関大を目指す動きが出ています。工学系では産業の成長が見込めるAIやデータサイエンスなどの情報系の学部・学科が人気を集め、昨年度と比較すると、志願者は10%ほど増えています」

 東京大教養学部2年の萩原湧人さんは、大阪医科大を2年次に中退し、工学部に進むため、東大に再入学。来年からは工学部電気電子工学科でAI関連の分野を学ぶという。

「今後も医者の数が増え、医者が稼げない時代が来ると考えたことが、医学部を辞めた理由の一つ。反対に、AIを扱えるエンジニアは不足し、この分野で力をつければ十分に稼げる。医者以上に人を救える機器を開発できることも魅力です」

 東大では文系コースから工学部の情報系の学科に進学するケースや、大半が医学部に進学する理IIIからエンジニアを養成する理学部情報科学科に進学するケースも出ているという。

 情報系エンジニアの給与は高額化し、IT業界では新卒入社の一律の初任給制度を廃止して、技術力にたけた人材を好待遇で採用する動きが出ている。例えばIT大手のDeNAは「AIスペシャリストコース」の採用で、初年度の年収が600万~1千万円に。

 大学通信の安田賢治常務はこう見る。

「プログラミングが義務教育で必修になるなど、求められる人材が変わってきている。この先は医者が遠隔操作で手術をする技術やAIが診療することも想定されており、エンジニアがさらに必要となる時代になると考えるのも不思議ではありません」

 理工系の研究に力を入れる大学を見分ける一つとして、国が大学に支給する科学研究費補助金(科研費)の増加比に注目したい。科研費は一般的に研究費用がかかる理工系の学部学科で多くを得ている傾向があるが、関西の大学や地方国立大が目につく。

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