吉川医師はパニック障害の発生要因についてこう述べる。

「パニック障害は、以前は心の病だと考えられていました。しかし近年は、脳の大脳辺縁系にある扁桃体に、セロトニンなどの脳内伝達物質がうまく伝わらなくなる脳機能障害が原因の精神疾患として扱われるようになっています。パニック障害の患者が恐怖や不安を感じるのは、感情をコントロールする脳の機能が過剰に働いているためで、動悸などが起きるのは、自律神経が過度に興奮することで、からだが緊張状態になるのが原因です」

 パニック障害の患者は、周囲の人に自分の弱いところを見せたがらない傾向があるため、症状を一人で抱え込んで治療が遅れて重症化してしまうことがある。早期に適切な治療を受けるために、患者の家族や周囲の人は正しい理解と手助けを心がけてほしい。

※週刊朝日ムック「新名医の最新治療2011」から抜粋。医師の所属は当時。