イラスト/コウゼンアヤコ
イラスト/コウゼンアヤコ

 脳卒中によって脳がダメージを受けることで、手足の動きや言語機能など、さまざまな後遺症が残ることがあります。そのため、生活上の悩みに直面することがあります。医療機関では、医師・看護師・療法士とともにソーシャルワーカーを配置し、さまざまな生活のサポートを提供しています。週刊朝日ムック「突然死を防ぐ脳と心臓のいい病院2019」では、初台リハビリテーション病院SW部門チーフの笠井世志子氏に取材しました。

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 脳卒中(脳血管障害)を発症した患者とその家族は、急な出来事に非常に戸惑います。後遺症が残ると、患者は、リハビリテーションを含めて長期療養を余儀なくされます。仕事や家庭などの生活環境が一変し、経済的に重い負担がかかったり、暮らしの上でさまざまな悩みを抱えたりします。

 医療機関では、患者や家族の支援をおこなっています。専門職として設けられているのがメディカルソーシャルワーカー(以下、MSW)です。急性期病院・リハビリテーション病院には、ほぼ配置されています。

 では、どのような支援を提供するのかというと、まずは患者、家族の気持ちをじっくり伺います。そして、患者とスタッフのコミュニケーションの仲立ちをしていきます。初台リハビリテーション病院のMSW、笠井世志子氏は次のように説明します。

「脳卒中では、言語障害や高次脳機能障害を伴いやすく、MSWの介入が必要なケースも多いのです。たとえば、患者さんに退院後の生活上の要望を聞いて、リハビリの療法士に伝え、訓練メニューの立案に役立ててもらうこともあります」

 経済面での手続きのサポートも大切な役割です。多いのが、障害年金の受給申請の手続きのサポートです。在職中の患者が休職する場合、健康保険の傷病手当金の受給申請も手助けします。

 入院中は、退院支援として、要介護認定の手続きをサポートしたり、自宅退院の準備や、ときには介護施設を紹介したりすることもあるといいます。若年で発症する人も多く、退院後の復職支援も、MSWの大切な仕事です。場合によっては、患者の再就職も支援しています。

■脳出血によるさまざまな後遺症

 東京都に住む大川修平さん(仮名、52歳)は2012年11月、会社の同僚との会食中に突然、意識を失って倒れ、病院に運ばれました。脳出血を起こしたのです。

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