1カ所の毛が抜ける“10円ハゲ”のイメージが強い「円形脱毛症」。しかし、2カ所以上や全身の毛が抜けるタイプもある。かつては精神的ストレスだと言われた原因は、遺伝子のタイプにあるとわかってきた。
「円形脱毛症」にはさまざまなタイプがある。一般的にイメージされるような、頭髪の1カ所が円形に脱毛するタイプは「単発型」といわれる。しかし、これは脱毛パターンの一つにすぎない。2カ所以上脱毛するものを「多発型」、首筋近くの後頭部、耳の周りの側頭部、おでこの上など生え際が帯状に脱毛するものを「蛇行型」という。重症化すると、頭髪のすべてが抜ける「全頭型」、眉毛やまつげ、ひげ、陰毛などの全身の毛が抜けてしまう「汎発型」もある。
大阪大学医学部皮膚・毛髪再生医学寄附講座特任教授で、心斎橋いぬい皮フ科の乾重樹医師によると、かかりやすい年齢や性別は特にないという。赤ちゃんから高齢者まですべての年齢で発症する。
1カ所が丸く脱毛する単発型の場合、本人にはその自覚がなく、散髪の際に美容師などに指摘されて初めて気づくパターンが多い。単発型は自然に治ってしまうことが多く、最も治療しやすい。これが全頭型や汎発型の場合、ある日突然、全部の頭髪、または全身の毛が抜けてしまう。
「突然の脱毛とはいえ、脱毛する前にごくまれに皮膚に痛みやかゆみを感じる方もいます。ただ、予兆というのはほとんどの場合ありません」(乾医師)
円形脱毛症の原因は、かつては精神的ストレスだとされていた。しかし最新の研究では遺伝子タイプによる体質であるとされている。
「ストレスのない人などいないこの現代社会で、ストレスが円形脱毛症を発症するきっかけになるかどうかも科学的には証明されていません」(同)
円形脱毛症の原因とされる遺伝子の一つが、「HLA」(ヒト白血球型抗原)だ。HLAにはいくつもの型があり、円形脱毛症になりやすい型がある。ただし、この型をもっていれば必ず発症するというわけではない。
発症の引き金になるものがいくつかある。インフルエンザや風邪などのウイルスによる感染症や、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状、そして出産、ケガ、身体的ストレス(疲労)だ。