私は子供の頃からたくさんのアイドルを愛でてきました。しかしながら、それを共有する仲間が常にいたかと言われると、そうではなかった。例えばジャニーズプロレスが「好き」という事実は、ともすればあまり周囲に悟られたくないものでしたし、女性アイドル歌手に熱を上げるのも、普通の男子とは違う意味や目的があったため、いつしか「独自の距離感で密やかに」というのが癖になってしまったのかもしれません。例えば『推しメンバー』とか『○○派』なんて概念についても、むしろそんなもの気分や季節によって変動する方がおもしろいと思うぐらいなので、大人になって「明菜派と聖子派って本当にあるんだ!」と知った時は驚いたものです。

 今はわざわざ『自分の忠誠心(スタンス)』を表明し、同意を求め、仕舞いにはそれを互いに強要し合ってこそ誠実みたいな価値観が蔓延しているせいか、誰か(何か)を好きになること、好きだと公言することに不自由さが伴う感があります。SMAPと嵐、モー娘とAKB、安室ちゃんとあゆ、羽生くんと宇野くん、どちらもそれぞれ好きでいいと思いますが、それだと不安になってしまう世の中なのかもしれません。アイドルは大衆性の象徴です。私もアイドル好きである以上、『冷静で多角的で柔軟な情熱家』でありたいと思います。だからこれからも石破さんを応援していこうと思う次第です。

週刊朝日  2018年10月5日号

著者プロフィールを見る
ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

ミッツ・マングローブの記事一覧はこちら