森友にしても加計にしても、以前ならば、自民党議員たちから問題ありという声が噴き出したはずである。そういう、自らをただす姿勢が少なからずあったから、自民党は長く政権を維持できたのだ。

 だが、小選挙区制になって、自民党から立候補するためには、執行部から公認されなければならず、気に入られようとする。そして、議員になれば、なるべく早く党の役員になり、大臣にもなりたいと願う。となると、安倍首相に取り立てられなければならず、つまりは安倍イエスマンになってしまう。そして、自民党議員たちがそうなってしまったために、森友疑惑でも加計疑惑でも、問題ありという声が出なくなってしまったのだ。問題ありだと思った議員たちも、怖くて声が出せないのである。これは大問題だ。

 だが、それ以上に問題なのは、安倍首相のイエスマンになった議員たち、いや幹部たちも、この国のためにどういうことをすべき、あるいはすべきでないかを責任を持って考えなくなっているのである。これは自民党の劣化だ。いってみれば、安倍首相任せなのだ。そのことを安倍首相自身、強く感じているはずである。

週刊朝日  2018年10月12日号

著者プロフィールを見る
田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

田原総一朗の記事一覧はこちら