“天皇陛下の執刀医”が受験生へアドバイス 「満点を目指さず90点主義」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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“天皇陛下の執刀医”が受験生へアドバイス 「満点を目指さず90点主義」

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庄村敦子週刊朝日
埼玉県生まれ。順天堂大学心臓血管外科教授、順天堂医院院長。1983年日本大学医学部卒業。新東京病院などを経て現職。オフポンプ冠動脈バイパス手術の第一人者。2012年に天皇陛下の心臓手術を執刀。

埼玉県生まれ。順天堂大学心臓血管外科教授、順天堂医院院長。1983年日本大学医学部卒業。新東京病院などを経て現職。オフポンプ冠動脈バイパス手術の第一人者。2012年に天皇陛下の心臓手術を執刀。

「医学部合格は、医学を勉強する権利を得たというだけで、スタートラインです。予習、復習、リサーチを続けられないと、進級は厳しい。テスト前の一夜漬けも1度ならまだいいのですが、普段から勉強しないで一夜漬けを続けていると脱落していきます」
 
 医学部合格はゴールではありません。医学生になってからも学び続け、医師になってからも新しい情報を収集し、勉強を続けなくてはいけません。
 
 3浪を経験した天野医師は、入学後は誰よりも勉強しました。心臓外科医になって間もない頃、父親の心臓弁膜症の手術を先輩医師に託し、結果亡くした過去があります。この悲しい出来事で、心臓外科医を究めようという思いが強くなりました。

「手術の前にはあらゆるケースを想定し、そのときの対応を確認しているため、手術中に何か起きても落ち着いて対処できます。また、手術の直後から翌朝までに手術内容を分析し、すべての手術を記録しているので次の手術の改善につながります。手術に新しい工夫を加えることによって、患者さんの身体の負担が少なくなることも、やりがいのひとつですね」
 
 天皇陛下の手術のときには、当時先進的な手技として、脳梗塞にならないような工夫をしました。

 天野医師が、心臓を動かしたまま手術する「オフポンプ冠動脈バイパス手術」に挑戦した1996年には、日本ではこの手術はほとんど行われていませんでした。

「従来の手術と比べると難易度は高いのですが、心臓をはじめ全身への負担が少なく、術後の回復が早い。今後はこの手術が主流になると確信し、海外の手術を見学。ビデオを入手し、独学で縫合の技術を身につけました」
 
 62歳になった今も、年間350件ほど執刀し、手術件数は8千例を超えましたが、手術記録は欠かしません。成功率は98%以上、予定された手術なら99.5%と高確率なのは、努力と工夫を続けているからなのです。

■受験勉強は、医師に必要なことを訓練するチャンスでもある
 
 天野医師は、「受験生のときに医師として必要な資質を鍛えることができる」と話します。「医師のなかでも、外科医は特にプレッシャーやストレスを感じることが多い。そのストレスを自分で管理できないといけないので、受験生時代から訓練し、乗り越えた人が医療現場で戦力となり、戦えます」
 
 受験生へのアドバイスを求めると、「机に向かったら、すぐに勉強すること」と即答。

「これが自然にできるようになれば、80%以上合格します! ゴルフは構えたらすぐに打つのがコツ。それと同じです」
 
 また、1~2時間勉強する時間があるとき、「大体このぐらいのことをやろうと計画し、進捗がほぼ一致することも大切」だといいます。

「持ち時間に対するワークを確立できれば、90%以上合格します! 手術も同じで、時間を常に気にしなければいけません。長時間の手術は患者さんの負担になるので、できるだけ手術時間を短くするための工夫をしています」
 
 受験生のときに計画を立て、時間を意識しながら勉強することは、医師や研究者になってからも役に立つのです。さらに必要なのが「失敗を恐れないこと」だと話します。

「私が提唱しているのが、90点主義。満点を目指さず、10点は捨ててもいいから冒険を。参考書に書いていないこと、出題者が見たことがないようなことを書くといい。90点の答案が120点になることもあります。そのためには、受験勉強にひもづいたことだけを勉強するのではなく、興味を持ったらとことん調べ、深みにはまってみるのもいい。この姿勢は医師を含む科学者にとって必要なことです」
 
 医学部入学後、国際交流も重視される時代なので、受験英語に疲れたら、スカイプでネイティブとやり取りしたり、英語学校に行ったりするのもおすすめだといいます。

「医学部受験で大事なのは、他人との闘いではなく、自分との闘いだということです。『あいつが合格したから自分は落ちた』『自分が合格したからあいつが落ちた』といった考え方はしないほうがいいのです。スポーツと同じで、自分との闘いに持ち込めた人が、納得のいく結果を出せます」

 偏差値に見合った大学だけを受験せず、行きたいと思う大学があればオープンキャンパスに行き、「将来、自分はここで学ぶんだ」という動機づけをすることも大事です。(文/庄村敦子)


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