埼玉県生まれ。順天堂大学心臓血管外科教授、順天堂医院院長。1983年日本大学医学部卒業。新東京病院などを経て現職。オフポンプ冠動脈バイパス手術の第一人者。2012年に天皇陛下の心臓手術を執刀。
埼玉県生まれ。順天堂大学心臓血管外科教授、順天堂医院院長。1983年日本大学医学部卒業。新東京病院などを経て現職。オフポンプ冠動脈バイパス手術の第一人者。2012年に天皇陛下の心臓手術を執刀。

 2012年に天皇陛下の心臓手術を執刀した天野篤医師の手術数は既に8000例以上。成功率は98%以上で、予定された手術なら99.5%と驚異的だ。現在発売中の『医学部に入る2019』では天野先生に取材し、「医者を目指した理由、医学部合格の秘訣と今後の医師像」について語ってもらった。

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「小6の頃、テレビドラマ『白い巨塔』を見て、手術で患者を治す外科医はカッコいいな、と目を奪われました。中2のときに母が胃潰瘍の手術を受けて回復したことから、さらに外科医への憧れが強くなりました」
 
 天皇陛下の執刀医として知られ、難手術を成功させることから、「神の手」と呼ばれる天野篤医師は、外科医に憧れた理由をこう振り返ります。
 
 天野医師によると、医学生が医師を志した理由の約9割が家族や親戚、自分の医療体験で、残りの1割ほどが医療ドラマや医療漫画などの影響だといいます。

受験勉強中の自分を励ますために、『人の役に立つ』『人から尊敬される』『もうかる』『親に楽をさせる』などの理由もあるでしょうが、やっぱりきっかけは医療体験だと思います。医療体験は小さな芽です。その芽を医学部に入って蕾にし、医師になっていかに開花させていくかです」

■医学部合格はスタートライン、入学後のハードルは昔より高い
 
 天野医師が医学部に入学した頃と比べると、現在は勉強量も増えて、入学後のハードルが高くなっているそうです。

「私たちの時代と比べると、学生の社会性がなくなり、幼稚になったように感じます。昔はほぼ全員が部活やサークルに入る『ムラ社会』で、入学すれば助け合って何とかなった。ところが、今は部活やサークルに入らない『帰宅部』の学生も少なくありません。本学でも、1学年140人中15%ぐらいが帰宅部です。以前では考えられませんね」
 
 学生が、社会のさまざまな誘惑に負けてあまり勉強しなくなると、有名進学校出身の学生でも留年するといいます。

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天野医師は3浪を経験