16ミリフィルム用のリール。横浜市の映画館シネマノヴェチェントには、35ミリフィルムだけでなく、16ミリや8ミリフィルムの映写機もあり、持ち込み上映などの要望にも応えているそう(撮影/東川哲也・写真部)
16ミリフィルム用のリール。横浜市の映画館シネマノヴェチェントには、35ミリフィルムだけでなく、16ミリや8ミリフィルムの映写機もあり、持ち込み上映などの要望にも応えているそう(撮影/東川哲也・写真部)

 映画が好きでたまらない少年トトと映写技師アルフレードの交流を描いた、「ニュー・シネマ・パラダイス」がイタリアで公開されてから30年。日本でもいまだ単館興行成績1位の座を譲らない名作で、今年9月15日~17日には東京と大阪でシネマ・コンサートが開催された。一方で、フィルムを上映する映画館と映写技師は、年々その数を減らしている。“現代のアルフレード”は、いま何を思うのだろうか。

【写真特集】現代の映写技師に密着!フィルム上映の舞台裏や貴重な機材などを紹介します

「あるべきものを、あるべき姿で見たい、っていうだけの話なんですよ」

 “日本最小の映画館”を自称するシネマノヴェチェント(横浜市)のオーナーであり映写技師である箕輪克彦さんはそう口にした。

 日本の映画館をデジタル化の波が襲ったのはこの10年。日本映画製作者連盟の調査によれば、2009年にはわずか13%に過ぎなかったデジタル設備が、2012年には88%を占めるまでになったという。2017年12月末の時点で、全国約3500のスクリーンのうち、35ミリフィルムの上映設備を持つのは580、フィルム上映のみを行うスクリーンは47にまで数を減らしている。

 同時に、フィルムでの映画製作も激減した。コストがかかるうえ、2013年に国内大手メーカーが撮影用フィルムの製造を終了したこともあり、現在、フィルムで上映される新作はほとんどないという。

「アメリカやヨーロッパでは35ミリフィルムで撮るのがまたムーブメントになってきているし、日本でもカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』など、作り手がフィルム撮影にこだわっている作品はあるんですが、映画館に上映機材もなければ映写技師もいないから、配給にあたってデジタル化せざるを得ないのが現状なんです。だから当館では、旧作だけれど日本劇場未公開の作品、たとえばテレビでしか放映されなかった洋画などを中心にかけています。フィルムで撮られたものはフィルムで見たい。映画ファンってそういうところあると思うんですよね」

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