かつてはフィルムが燃えやすい素材でできていたため、上映には国家資格が必要だったというが、現在は「映写技師なんて誰だってやれるよ」と箕輪さんは笑う。

 上映用のプリント(フィルム)は通常、1ロール15分前後のものが缶などのケースに入れられて何巻かに小分けされた状態で、コンテナと呼ばれる袋に入って届く。それを1本につなぐ編集作業から、映写技師の仕事は始まる。スプライサーという器具を用いて、リーダー(カウントダウンのための数字コマや黒コマなどで構成されている部分)をカットし、スプライシングテープと呼ばれる専用テープを用いて本編同士をつないでいくのだ。

 その際、どの巻のフィルムかがひと目でわかるように、本編の冒頭や末尾の1コマだけを残してカットするのが業界の慣習になっているそうだが、「フィルムは1コマの違いにもこだわって編集されているもの。それを尊重したいので、僕が最初にハサミを入れる場合は、1コマも残さず、黒コマのすぐ後ろで切るようにしています」と箕輪さん。

 1本につないだら、上映用のリールに巻き取る。大型のリールにはおよそ2時間半までかけられるというが、それ以上の尺(長さ)の映画をかけるには、2台の映写機を用いての切り替えが必要となる。

 映写機にセットする際は、フィルムに“遊び”をもたせることが重要だ。「ピンと張ってしまうと、上映中にフィルムが切れることがある。要所に適度なたるみがあるか、ひとつひとつ確認します」(箕輪さん)。

 そして、上映前に必ず試写を行い、絵や音に飛びがないかなどをチェック。同時に、フォーカスと画角、サウンドシステムや音量も確認し、最適な状態を記録しておく。

「フィルムのかけ方は、最初に師匠から教わったけれど、ここはこうやるんだよ、ってそれくらいでしたよ(笑)。当然、最初は失敗ばかりでね。映写機からちょっと目を離したすきに、床がフィルムで埋まっていたとか(笑)、ありとあらゆる失敗をした自信がありますね。いまではちょっとやそっとのことでは動じません」

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