金融機関も一時、多くの店舗が営業できなくなった。道内最大手の北洋銀行は168店舗中47店、北海道銀行は140店中27店しか営業できない状態だった。ATMが止まり、お金を引き出すことができず、右往左往する人もいた。

 多くの患者を抱える医療機関への影響は、さらに深刻だった。道内で300超の病院が停電。34カ所の災害拠点病院が自家発電で対応に当たった。停電した病院では、重症者や人工透析の患者を、ほかに転院させる対応に追われた。道内には透析患者は約1万5千人。日本透析医会の山川智之常務理事がこう話す。

「透析の間隔は2日間以上開けないようにしなければなりません。しかし、患者さんを移動させることは体に負担をかけることになります。数十キロの移動は阪神・淡路大震災や地震で経験していましたが、広域停電は本当に困る。何百キロも移動させることを考えなければならなかったからです。当初は、電気の復旧まで1週間以上と聞いて緊張が走りました」

 道内全域で「ブラックアウト」という異常事態を招いたのは、震源近くにあり、道全体の約半分の電力を供給していた苫東厚真火力発電所(3基、計165万キロワット)が被害を受けたからだ。電力の需給バランスが崩れ、他の発電所も故障を避けるために次々と止まった。

 北海道電力の真弓明彦社長は6日の記者会見で「極めてレアなケース。すべての電源が落ちるリスクは低いとみていた」と釈明した。

 だが、地震学者の島村英紀・武蔵野学院大学特任教授が批判する。

「北海道電力で最大の火力発電所が、止まってしまった。一つの発電所で北海道の約半分の電力をまかなっていたことが、問題でした。地震への備えが不十分だとの批判は、免れないと思います」

 環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長もこう指摘する。

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