次に男女の倍率比が大きかったのは日本大で、2.18倍。過去4年間の数字を見ても1.46~1.71倍と、比較的高い数字が続いている。日大側の説明では、性別で得点の差をつける余地はなく、偶然、倍率比が高い状況が続いているという。

 国公立大でも男女の倍率比が高いところがある。北海道大1.78倍、三重大1.76倍、山口大1.54倍などだ。各大学はいずれも、「得点調整はしていない」「試験をした結果」などとしている。

 このように、取材に応じたすべての大学が得点調整を否定している。

 専門家の間では、男子が有利な試験になっているとの指摘もある。

 例えば試験科目によって難易度を変える方法だ。一般的に数学を得意とする男子が多いため、数学の試験問題を難しくすることで、女子の得点を全体的に抑えることができるという。

 ほぼすべての大学である面接試験は、面接官の裁量が大きい。ある医学部准教授はこう説明する。

「1次試験の得点だけで選んだら、女子ばかりになってしまう。女子があまり希望しない外科系の医師を確保するためにも、男子を一定数はとらないといけない。面接で男子を高めに評価する可能性はあります」

 こうした男子優遇は続いてきたとの声もある。

「東京医大の得点操作はショックですが、『やっぱりな』という印象です」

 こう話すのは首都圏の国公立大医学部に通う女子学生。自身の面接で、理不尽な対応があったという。

「集団面接の際、男子には笑顔で、女子にはあからさまに圧迫的な面接だった。『まあ、女性はね』などと鼻で笑う面接官もいて、あまりの違いに驚きました」

 医師の人材紹介会社「エムステージ」が、8月に現役医師に行ったアンケートでは、女子への得点操作について65%が「理解できる」「ある程度は理解できる」とした。〈東京医大がやったことも必要悪として気持ちはわかる〉といった意見も少なくなかった。

 こんな意見もあった。

〈高校で「女性は男性より点数を高く取らないと合格しない」と言われていた〉
〈私大の縁故入学や女性不利は十分に感じていた〉

 文科省は8月10日、全国の医学部のある大学に、調査を通知。男女別、年齢別の合格者数などを6年分回答するよう求めた。おかしな数字があれば、追加資料の提出や訪問調査も検討。結果は9月以降に公表する見通しだ。

 多くの大学が男女の合格倍率に差があっても、問題ないとする。試験は公正・公平で、結果的に差が開いているだけだという。

 本当にそう言い切れるのか。第二、第三の東京医大が見つかる可能性は否定できない。(本誌・吉崎洋夫、岩下明日香)

週刊朝日  2018年8月31日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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