田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
女性差別を非難したマスコミも同じ問題を抱えている(※写真はイメージ)
女性差別を非難したマスコミも同じ問題を抱えている(※写真はイメージ)

 女子受験生の成績を一律減点していたことが発覚した東京医科大の不正入試問題。ジャーナリストの田原総一朗氏は、この女性差別を非難したマスコミも同じ問題を抱えていると苦言を呈する。

*  *  *

 東京医科大が医学部医学科の入試で、女子受験生の得点を一律に減点し、合格者数を抑えていた。

 東京医科大の場合、1次でマークシート方式の筆記試験を行い、合格ラインを超えた受験生だけが2次の面接と小論文などに進む仕組みで、募集要項では男女別の定員は定められていなかった。

 大学の関係者によると、東京医科大では1次の結果について、女子の点数に一定の係数をかけて一律に減点し、その結果、2018年の一般入試の受験者2614人(男子61%、女子39%)のうち、1次試験の合格者は男子67%、女子33%であったが、2次試験を経た最終合格者は男子82%(141人)に対し、女子は18%(30人)と大きく下がって、差が顕著になった。

 大学関係者によると、こうした調整は長年続いていて、10年の一般入試の合格者の男女比で、女子が4割弱となったことで、加速されたのだという。

 一般に病院が、女性は出産や子育てで離職することが多いので、女医を嫌がっているためだというのである。

 こうした東京医科大のやり方に、どの新聞もテレビも許しがたい女性差別だと大批判を展開した。いまどき、このような露骨な女性差別が行われているとは、あきれはてるというのである。

 東京医科大の実態を調査した弁護士は会見で、“本学の体質に根差す構造的、根深いところに原因があるのではないか”“周回遅れで、二、三十年遅れた発想だ”と厳しく断じた。新聞やテレビの厳しい批判はもっともだと思う。

 だが、大批判を展開している新聞社やテレビ局は、男女平等だといえるのだろうか。

 たとえば全国紙やキー局の役員の中に女性は何割いるだろうか。日本の上場企業で女性役員の割合は、なんと3.7%しかないのである。東京医科大の女子の合格者が2割であることを考えると、こちらのほうがまだマシではないかとさえ思えてしまう。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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