「辺野古新基地建設を阻止するために翁長さんは命を賭して闘い、殉職されたと感じています」
8月8日、膵がんのため亡くなった翁長雄志(おながたけし)・沖縄県知事(享年67)を、前泊博盛・沖縄国際大学教授は「殉職」という表現で悼んだ。
保革共闘体制の「オール沖縄」を掲げ、2014年11月の知事選に出馬。当時の現職を約10万票の大差で破って初当選した。翁長氏はもともと自民党県連幹事長を務めるなど、沖縄保守政界のエースだった。だが自民党と袂を分かち、知事就任後は一貫して基地建設阻止を主張し、安倍政権と激しく対立してきた。
「翁長さんが問い続けたのはこの国の『政治の品格』でした。沖縄が選挙で民意を示しても安倍政権は無視して基地建設を強行し続けている。政府のすさまじい圧力の中で、翁長さんは死期を早めたのかもしれない。最後まで闘いたかっただろう。無念の死を遂げたと思います」(前出の前泊氏)
翁長氏が亡くなる数時間前まで、沖縄県選出の野党議員らは知事選候補について協議していた。会合の場で、改めて翁長氏の再選へ向けて協力していくことを確認したばかりだった。9月の知事選では、自民県連は宜野湾市長の佐喜真淳(さきまあつし)氏を擁立。「オール沖縄」側はどうするのか?
「翁長さんが後継を指名していたわけではないので、すんなり誰とは決められないのが現状です。誰を立てても翁長さんと比べてしまいます。それほど翁長さんの存在が大きかったということです」(地元記者)
候補者選考が難航しているというのだ。
「翁長さんは辺野古新基地建設に反対する民意が生み出した政治家。翁長さんの遺志を継ぐリーダーは必ず出てきます。知事選は翁長さんの弔い合戦になります」(前泊氏)
「オール沖縄」は再び、結集できるのか。照屋寛徳衆院議員(社民党)が語る。
「翁長さんはメッセージ力のある政治家でした。県民大会などで、沖縄方言で県民に対して『まきてぃならん(負けてはなりませんよ)』と語りかけ、政府に対しては『うちなーんちゅ、うしぇーてぃないびらんどー(沖縄人を侮ってはいけません)』と言い放つ。その言葉が保守・革新を超えて県民の心にグサリと突き刺さるのです。もう『オール沖縄』を叫ぶだけでは勝てない。保革を巻き込んだ闘いをしないといけない」