それ以外の4~5割の人は第二段階の治療を受けることになり、生物学的製剤のほか、JAK阻害薬という内服薬も選択肢に入ってくる。どちらも免疫の働きをする物質そのものに、ピンポイントに作用して免疫の暴走を抑える。

■点滴や皮下注射不要 自宅で薬を飲むだけ

 東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター特任教授の針谷正祥医師は、生物学的製剤やJAK阻害薬について次のように解説する。

「生物学的製剤は、いわば細胞の外側に作用するのに対して、JAK阻害薬の作用は細胞内の核にまで到達します。細胞内で、免疫に関するシグナル伝達を担うヤヌスキナーゼ(JAK)という分子の働きを妨げるため、より根元部分で免疫の暴走を抑えられると考えられています」

 JAK阻害薬が登場した5年ほど前は、MTXが効かなかったら生物学的製剤、それでも効かなかったらJAK阻害薬という、第三の薬剤だった。

「しかし、臨床の場でJAK阻害薬の有効性・安全性が確認されるにつれ、治療の第二段階からすでに生物学的製剤かJAK阻害薬、という使われ方になってきました」(竹内医師)

 日本で初めてのJAK阻害薬は2013年に承認されたトファシチニブである。その後、17年にバリシチニブが加わった。

「JAKを抑えることの有効性が、1剤だけでは『たまたま効いた』可能性もありましたが、2剤目も出てきたことで信頼性が高まったといえます」(同)

 実際に、バリシチニブの臨床試験データでは、ある生物学的製剤(TNF阻害薬)と比較して、寛解達成が同等か、試験によってはわずかながら上回る結果が出ている。

 JAK阻害薬と生物学的製剤との大きな違いは、注射の必要性の有無である。生物学的製剤は点滴や皮下注射で投与され、いずれにしても注射が必要である。これに対してJAK阻害薬は錠剤を服用するだけ。しかもトファシチニブは1日2回だが、バリシチニブは1日1回でよい。

 すなわちJAK阻害薬により、生物学的製剤並みの有効性・安全性を、注射の痛みや通院の手間を省いて、自宅で内服するだけで享受できることになる。

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