総裁選3選に向け風が吹く安倍首相(左) (c)朝日新聞社
総裁選3選に向け風が吹く安倍首相(左) (c)朝日新聞社
政治ショーを世界に見せた金正恩氏 (c)朝日新聞社
政治ショーを世界に見せた金正恩氏 (c)朝日新聞社

 ピンチの度に神風が吹き続ける安倍政権。モリカケ問題で3月には支持率が30%台まで急落するも、ダメ野党にも助けられ、新潟県知事選では人気者の小泉進次郎氏抜きでも勝利。9月の自民党総裁選も安倍首相の3選が確実視される。安倍一強はこのまま続くのか? 松原隆一郎・放送大学教授(社会経済学)と御厨貴・東大名誉教授(政治学)、二人の論客が今国会を査定する。

【政治ショーを世界に見せた金正恩氏】

*  *  *

松原:安倍晋三首相はいつもピンチになると風が吹く。神がついているのかもしれません(笑)。モリカケ問題で3月に大きく支持率を落としましたが、新潟県知事選に勝利して、それまでの野党の追及をチャラにした。昨年の衆院選でも台風の目だった希望の党が小池百合子都知事の失言で自滅。反対に野党は運がない。

御厨:安倍さんに風が吹きやすいのは、ポスト安倍がいないのも理由の一つです。岸田文雄政調会長も早々に総裁選に出ないと決めた。野田聖子総務相もいま金融庁の疑惑で揺れている。安倍一強で「安倍の前に安倍はなく、安倍の後に安倍はなし」という状況。首相候補がここまでいないことはなかった。安倍さんが6年間、営々としてやってきた、後継者づくりを一切しない“政策”が成功したと見ています。

松原:岸田さんが出ないのは大きいですね。また石破茂元幹事長との闘いか、という既視感が漂う。しかも野田さんが出れば、石破さんと共倒れになる。岸田さんが出たなら石破対策に専念できなくなる。なぜ早くも出ないことを決めたのか。

御厨:安倍さんは「自分に何かあったときは、岸田君、キミだ」などと甘くささやいたのではないでしょうか。普通は引っかからないが、あの人は純粋なので。安倍さんが佐藤栄作元首相流の人事をやるならば、かつての前尾派にしたように、次の改造で岸田派を冷遇する。釣った魚に餌をやらない、というのがこの世界ですからね。

松原:安倍さん以降では後継者の大きな空白地帯ができており、若手の中では小泉進次郎筆頭副幹事長以外に話を聞きません。ただ、進次郎さんは大臣経験がなく、実務経験がありません。

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら
次のページ