松原:北朝鮮関係の危機感が醸成されれば改憲の可能性が高まりそうですが、沈静化してしまった。

御厨:改憲する条項についても次から次へと変わっています。実質的な改憲は安保法制でやっているし、ここにきて9条を改正するといっても、国民投票にかけて今やることかと疑問が出るでしょう。憲法改正をするなら、国家像を語るべきですが、そこを曖昧にして見えなくしている。

松原:北朝鮮と言えば、国会期間中に日本よりもおもしろい政治ショーを見せてくれた。金正恩朝鮮労働党委員長は身内を処刑するなどとんでもない人物ですが、あの若さで核をめぐる駆け引きからアメリカのトランプ大統領を交渉の場に引きずり出し、中国の習近平国家主席と一緒に並んだ姿を見せ、世界中に存在感をアピールした。これからは軍縮を材料にカネを引き出すつもりでしょう。

御厨:トランプ大統領が一度はやらないと言った首脳会談を、もう一度開催に向けて動き出すなど劇的に政治が動く見せ場もあった。外でダイナミックに動いている政治を見ると、日本の政治はあまりにも動いていない。日朝首脳会談にしてもトランプさんにお願いするしかない。それはいかに自分たちが何もしてこなかったかということがばれたということです。

(構成/本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2018年8月10日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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