脳科学コメンテーターの黒川伊保子さんによると、夫婦には「ある法則」があるという。
「結婚7年目、14年目、21年目、そして28年目に夫婦の危機がやってくるのです。すべて7の倍数の年ですが、これはヒトの脳に7年という生体周期があるからです」
人の脳は、7個までの情報は覚えやすく、7個の属性で表現された情報には完全性を感じる傾向がある。
脳には何かを理解するときに、とっさに使われる「記憶の仮の収納場所」のようなものが七つあるためだ。
「たとえて言うならば、脳には『世界観』をあらわすテーブルがあり、そのテーブルには座席が七つあるのです。座席が埋まれば、ヒトは全部そろった感じがして安心します。ラッキーセブンに七福神。幸福は東洋・西洋を問わず、七つの座席をいっぱいにしてやってくるようですね(笑)。七つの座席を埋めるのが時間幅を持つ情報ならば、これが埋まったとき、脳は『時間の完結性』を感じます。つまり『一巡した』という感覚を覚えるのです」
脳は地球の公転(1年)と自転(1日)をカウントしているので生体周期には7年周期と7日周期がある。
「7年周期については、骨髄液が満7年で入れ替わることがわかっています」
人間の骨髄液は毎日少しずつ入れ替わっているのだが、まるまる入れ替わるのには7年かかる。満7年で骨髄液が入れ替わるのに連動して、生体の免疫システムも入れ替わっていく。生体は外界から何かしらの刺激を受けると、免疫システムが反応して自らを防御する。しかし同じような刺激が繰り返されていくと、脳はだんだんに慣れてくる。
「たとえば田舎から都会に越してきた人が、最初は街の雑踏がうるさくて眠れないのに、やがて慣れてきて気にならなくなる……といったようなことと同じで、あまりに定常的な刺激が繰り返されると、『これは刺激ではなく、環境の一部として受け入れていかなくてはならない事象である』と免疫システムが受け入れていくようになるのです。このようにカラダが完全に事象を納得するのにも、7年かかるというわけです」
結婚生活が始まると、夫婦は互いの体臭の中で暮らすことになる。初めは互いの匂いが“外界の刺激”に感じられるから、ドキドキもするし、ムラッと発情もする。ところが結婚7年目となると夫婦の免疫システムは、互いの匂いを刺激ではなく、環境の一部として納得をする。ゆえにドキドキもしなければ、ムラムラもしなくなってしまう。
「脳の感性も7年ですっかり慣れてしまう……というか、すっかり飽きて気が変わってしまうんですね。だから新婚気分は続かず、夫婦には倦怠期というものが訪れるのです」
そして7年×4=28年の大きな周期でヒトは正反対の感性へと向かう(元の感性に戻るには、なんと56年もかかる!)。