黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さん/脳科学コメンテーター、人工知能研究者。感性分析の第一人者として年間100回以上の講演を行っている。著書に『夫婦脳』(新潮文庫)、『前向きに生きるなんてばかばかしい』(マガジンハウス)
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さん/脳科学コメンテーター、人工知能研究者。感性分析の第一人者として年間100回以上の講演を行っている。著書に『夫婦脳』(新潮文庫)、『前向きに生きるなんてばかばかしい』(マガジンハウス)
「結婚28年目の夫婦がなるべく目を合わさないようにして暮らすのは、脳科学上は当然の成り行きです」(黒川さん) (c)坂本康子さん
「結婚28年目の夫婦がなるべく目を合わさないようにして暮らすのは、脳科学上は当然の成り行きです」(黒川さん) (c)坂本康子さん
「結婚28年目を乗り越えられると、今度はその後徐々に〝相手への愛おしさ〟が戻ってきます」(黒川さん)  (c)坂本康子さん
「結婚28年目を乗り越えられると、今度はその後徐々に〝相手への愛おしさ〟が戻ってきます」(黒川さん)  (c)坂本康子さん

 脳科学コメンテーターの黒川伊保子さんによると、夫婦には「ある法則」があるという。

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結婚7年目、14年目、21年目、そして28年目に夫婦の危機がやってくるのです。すべて7の倍数の年ですが、これはヒトの脳に7年という生体周期があるからです」

 人の脳は、7個までの情報は覚えやすく、7個の属性で表現された情報には完全性を感じる傾向がある。

 脳には何かを理解するときに、とっさに使われる「記憶の仮の収納場所」のようなものが七つあるためだ。

「たとえて言うならば、脳には『世界観』をあらわすテーブルがあり、そのテーブルには座席が七つあるのです。座席が埋まれば、ヒトは全部そろった感じがして安心します。ラッキーセブンに七福神。幸福は東洋・西洋を問わず、七つの座席をいっぱいにしてやってくるようですね(笑)。七つの座席を埋めるのが時間幅を持つ情報ならば、これが埋まったとき、脳は『時間の完結性』を感じます。つまり『一巡した』という感覚を覚えるのです」

 脳は地球の公転(1年)と自転(1日)をカウントしているので生体周期には7年周期と7日周期がある。

「7年周期については、骨髄液が満7年で入れ替わることがわかっています」

 人間の骨髄液は毎日少しずつ入れ替わっているのだが、まるまる入れ替わるのには7年かかる。満7年で骨髄液が入れ替わるのに連動して、生体の免疫システムも入れ替わっていく。生体は外界から何かしらの刺激を受けると、免疫システムが反応して自らを防御する。しかし同じような刺激が繰り返されていくと、脳はだんだんに慣れてくる。

「たとえば田舎から都会に越してきた人が、最初は街の雑踏がうるさくて眠れないのに、やがて慣れてきて気にならなくなる……といったようなことと同じで、あまりに定常的な刺激が繰り返されると、『これは刺激ではなく、環境の一部として受け入れていかなくてはならない事象である』と免疫システムが受け入れていくようになるのです。このようにカラダが完全に事象を納得するのにも、7年かかるというわけです」

 結婚生活が始まると、夫婦は互いの体臭の中で暮らすことになる。初めは互いの匂いが“外界の刺激”に感じられるから、ドキドキもするし、ムラッと発情もする。ところが結婚7年目となると夫婦の免疫システムは、互いの匂いを刺激ではなく、環境の一部として納得をする。ゆえにドキドキもしなければ、ムラムラもしなくなってしまう。

「脳の感性も7年ですっかり慣れてしまう……というか、すっかり飽きて気が変わってしまうんですね。だから新婚気分は続かず、夫婦には倦怠期というものが訪れるのです」

 そして7年×4=28年の大きな周期でヒトは正反対の感性へと向かう(元の感性に戻るには、なんと56年もかかる!)。

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