北原みのり「幸福な夜を壊したセクハラ」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

北原みのり「幸福な夜を壊したセクハラ」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

このエントリーをはてなブックマークに追加
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

幸福な夜に、事件は起きた(※写真はイメージ)

幸福な夜に、事件は起きた(※写真はイメージ)

 女友だちと月に2度、麻雀の会を開いている。天井の高いカフェで、じゃらじゃら手積みで牌を触りながら、ビールやラテを飲みながらの約4時間。私たちはほぼ、麻雀の話しかしない。皆が麻雀素人で余裕がないからというのが実際のところだけど、それでも終わった後は、まるで互いに人生を語り合ったかのような錯覚に陥るほど、私たちは深まる。いったい麻雀が偉大なのか、女友だちが偉大なのか。

 で、そんな幸福な夜に、事件は起きたのだった。麻雀を終えて女4人で地下鉄に乗った時のこと。ちなみに私たちは世代も職業もばらばらで、30代ダンサー、40代(私)、50代自営業、60代物書きの4人だ。その私たちの前に、男(推定50代、黄土色のスーツ)が座り、じろじろと4人をなめまわすように見つめ、そして大声で、こう言い放ったのだった。「お前ら、化け物みてぇだな」と。とっさに私は反射神経で「はぁ?」と威圧したけど男は動じずニタニタし「化け物―だな」ともう一回言ったのだった。それはもちろん「個性的ですね」といった好意的な意味ではなく、ブス、ババアといった罵りの声色である。

 次の駅で私たちは降りた。そもそも降りる駅だったけれど、留まってできたことを考えても、レベル低い罵声やヒールで足の小指あたりを踏むくらいのことしか思いつかなかった。

 ホームに立って私たちは、とたんに無言になった。牌に向き合う無言と違う種類の無言。気持ち悪さ、悔しさに支配される無言。そして30代が手をばたつかせ喉をかきむしりながら叫んだ。「気持ち悪い!! さっきまで幸せだったのに!!!」。そして私たちは深くため息をつく。これは初めてではない。違う場面、違う言葉、違う男に、何度もあってきた。いったい、私たちはいつまで、こんな思いを味わうのか。


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい