年度替わりに伴う過労やストレスにさらされることが多くなりがちな「春」は要注意(※写真はイメージ)
年度替わりに伴う過労やストレスにさらされることが多くなりがちな「春」は要注意(※写真はイメージ)

 ある日突然、からだの左右どちらかの一部が痛み、赤く腫れ、次に小さな水ぶくれができて帯状に広がってきたら「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」かもしれない。これまで中高年層に多いとされてきたが、最近は若年層での発症も珍しくなくなってきたという。何が変わってきたのか。皮膚科専門医に取材した。

*  *  *

「帯状疱疹は、子どものころに水ぼうそうにかかった人なら誰でもかかる可能性があります」

『痛みを残さない帯状疱疹 再発させない単純ヘルペス』(メディカルトリビューン)などの著書がある宇野皮膚科医院・院長の漆畑修医師はこのように指摘する。水ぼうそうにかかると、症状が治まったあとも、水ぼうそうのウイルスは体内にとどまり、神経の中継所である神経節に数年~数十年の間、潜み続ける。これが、免疫力低下に伴いウイルスの活動が再び活発化し、知覚神経を伝わって皮膚の表皮細胞に達して帯状疱疹となる。発症する部位は顔面や頭部、胴体(脇腹や背中、胸)が多い。

 帯状疱疹の引き金となる免疫力低下は、水ぼうそうワクチンの効力の低下のほか、過労やストレス、加齢、重症なけがやがん、抗がん剤などの薬剤、放射線治療などで起こりやすい。

「仕事や日常生活で、年度替わりに伴う過労やストレスにさらされることが多くなりがちな『春』は要注意といえるでしょう」(漆畑医師)

 子どものころに水ぼうそうのワクチンを接種したとしても、成人前後にはその効力はほとんど切れてくる。これに新社会人としてのストレスが加わるため、帯状疱疹の年齢分布には、免疫力が低下しやすい50代以降の大きなピークのほかに、以前から20歳前後にも小さなピークがみられた。

 一方、水ぼうそうにかかった子どもが周囲にいると、成人の場合、とくに症状が出ないまま感染し、ワクチンを接種したのと同様の免疫を獲得できる。これまでの20~40代の多くは、子育てなどを通して水ぼうそうにかかった子どもと接することで、水ぼうそうのウイルスへの抵抗力を高めていた、と考えられている。

次のページ