ところが、認知症です。私も認知症はどうしても避けたいと思っています。

 がん一筋にやってきましたから、認知症については門外漢です。でも、自分自身の問題でもあるわけですから、一から勉強しました。その結果、わかったことは、認知症は老化現象であるということです。

 これが、私のなかで認知症とがんをつなげることになりました。

 がんを追究するなかで、がんはからだだけの病ではなく、こころやいのちにも深くかかわった人間まるごとの病であることに気づきました。だからこそ、人間まるごとを対象とするホリスティック医学を追い求める道に足を踏み入れたのです。

 認知症が老化現象だとするなら、それはまさに人間まるごとの問題なのです。改めて、認知症はホリスティック医学の対象となるのだとの思いを強めました。そうだとするならば、がん一筋できた私も、対岸の火事だと済ませるわけにはいきません。まあ、私自身が認知症になりたくないという強い思いもあるのですが。

 そんなことから、これからはホリスティック医学の一大テーマとして認知症に迫ってみようという気持ちになったのです。

 このシリーズがその端緒となるのであれば、幸いです。よろしく、お付き合いください。

週刊朝日 2018年5月4-11日合併号より抜粋

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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