認知症の正しい知識を理解してもらうために、講演会やテレビ、雑誌など、さまざまな分野で活躍する、遠藤英俊医師
認知症の正しい知識を理解してもらうために、講演会やテレビ、雑誌など、さまざまな分野で活躍する、遠藤英俊医師

 認知症と聞くと「特効薬がない」「不治の病で怖い」「周りに迷惑をかけるのだけは、いや」といった、ネガティブな考えばかり浮かぶ人が多いのではないでしょうか。週刊朝日増刊「ハレやか」4月号では、国立長寿医療研修センター長の遠藤英俊医師に取材し、認知症は、自分の心持ち一つで発病を遅らせたり、進行を遅らせたりできる病気だということが分かりました。情報に惑わされて一方的に怖がらずに理解し、毎日の生活を変えていきましょう!

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「自分のことが分からなくなったらどうしよう」「家族が認知症を発症したら、どうすればいいのか」そんな声をよく耳にします。

 残念ながら、認知症患者数は年々増加し、団塊の世代が75歳以上になる2025年には700万人になる見通しで、計算では65歳以上の高齢者の約5人に1人の割合となります。人間の脳は老化とともに、萎縮していきます。それに伴い、記憶力も低下していきます。それは自然なことです。でも、認知症は毎日の習慣を変えるだけで予防ができます。認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)になったとしても、正しい生活習慣を維持することで、普通の生活を続けられるのです。

■体験全体を忘れるのが、認知症の特徴

 では、認知症を予防するためには、何をすればいいのでしょうか。大切なのは「規則正しい生活」「バランスのよい食事」「適度な運動」です。拍子抜けしたかもしれませんが、これは事実。認知症の予防は、すぐに実践できることばかりなのです。

 まず、「認知症」と「もの忘れ」について知りましょう。認知症は出来事の一部を忘れるのではなく、全部を忘れるのが特徴。「お昼ご飯は何を食べましたか?」と質問した際に「メニューが出てこない」というのはもの忘れで、「食べたこと自体覚えていない」が認知症による記憶障害です。認知症は体験全体を忘れるので、社会生活に支障を来します。家族が「温かくてつるっとしたものを食べたじゃない」とヒントを出して「うどんだ」と答えられたらもの忘れ。ヒントで思い出すそぶりがなく、また、ここ1~2年でこのような状態が増えている場合は、認知症かもしれません。身近にそのような方がいる場合は、下記の認知症の人の家族がつくった「早期発見のめやす」リストで確認をしてみましょう。

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