同じ記事で「目覚ましい活躍をしないと、チーム内からも批判される可能性が高い」とも書いた。大谷の加入で、今季のエンゼルスの先発ローテーションはメジャーで一般的な5人制ではなく6人制に。これが他の先発投手の登板回数減、ひいては彼らの収入減にもつながる可能性があるからだ。しかしここまでの活躍ぶりを見ると、心配は杞憂(きゆう)に終わりそうだ。つくづく常識では語れない選手である。

「すごいなとは思うけど想定内です。3試合連続ホームランには驚かされましたが、それができるポテンシャルの持ち主で、日本野球史上最高の選手ですから。打者に専念すればイチローと松井(秀喜)を足して2で割らない成績、つまりシーズン200安打と30本塁打の同時達成だって可能です」

 こう語るのは、日本ハム時代を知るベテラン記者。最近の活躍ぶりはアメリカで「SHO(翔)TIME」と呼ばれているが、日本時代からすでに「打撃練習でカネが取れる」と言われていたという。

「狭い東京ドームで打撃練習すると外野スタンドの上の看板と天井の境目までボンボン飛ばして、相手の選手から拍手が湧くんです(笑)。プロ相手の“SHO TIME”で、『アイツがメジャーで通用しなかったら誰も通用しない』と別格扱いされていました」

 ハワイ在住で西武ライオンズの黄金時代を築いた名将・森祇晶氏は、技術以上の非凡さを評価する。

「彼は『必ず壁がやってくるからそのために準備しておかないと』と言っています。この大騒ぎに浮かれることなく冷静に自分を見つめているところがすごい」

 そして、移動と日程の厳しいシーズンを初経験することでの疲労を心配する。これは今回の取材で話を聞いた全ての方々が懸念するものだ。技術面では「スプリットを投げすぎ」という指摘が多い。

「昨シーズンは故障もあってフルに働いておらず、投打で今のようなペースで使われたら間違いなく壊れます」(大慈彌氏)

 というのが専門家の意見。ファンは二刀流をもっと見たいと思うだろうが、故障する大谷の姿は決して見たくはない。いろいろな意味で二刀流から目が離せない。(黒田朔)

週刊朝日 2018年4月27日号