キャンディーズのすごさは、このように解散から40年経っても色あせないことだ。アイドルはたくさんいたが、これだけ息の長い存在は珍しい。ソニーミュージックのホームページには今も公式サイトがあり、CDやDVDなどがネットで購入できる。ソニー・ミュージックダイレクトの石井宏明さんは、今も作品が売れ続けているという。

「15年11月に発売された『キャンディーズ メモリーズ FOR FREEDOM』というDVDボックスは1万本以上売り上げました。2万円(税別)の商品としては相当売れたと思います。現在もベスト盤や映像作品を扱っています。メンバーたちもソニーで売り続けてほしいと思ってくれているようです」

 50代の男性は中学生のころからファンだったが、ネットで3人の動画を見たことで、再燃したという。

「当時の思いが動画によってよみがえりました。最近はグッズを買いすぎて妻に怒られています」

 ゆずが「春一番」をカバーするなど、有名アーティストがいろんな曲を引き継いでいる。そうした音楽や動画に触れることで、キャンディーズを初めて知った若い世代も取り込んでいるようだ。

 当時の解散騒動は興味深かったと語るのは作家・コラムニストの亀和田武さん(69)。

「出版社に勤務し始めたころ、キャンディーズはテレビによく出ていた。メロディーもよかったし3人とも可愛かった。キャンディーズも作り上げられたアイドルかもしれませんが、昭和のテイストを残しつつ、次の時代の始まりを予感させてくれました。一度も再結成せず、その後の3人の生き方を含め、とてもドラマチックでした」

 今のアイドルグループの人気を支える仕組みも、キャンディーズが原型だという指摘がある。メンバーカラー(ラン=赤、スー=青、ミキ=黄色)があり、それぞれの持ち味が際立つことで、自分の「イチ推しメンバー」(推しメン)を選びやすくなった。グループの強みを生かして、幅広いファンを獲得できる。

 最後のシングル「微笑がえし」をヒットチャートの1位にしようと、レコードを自主的に複数枚買う動きも広がった。ファン同士も応援する仲間として一体感が高まった。

 こうしたファンを巻き込む仕組みは、今の人気アイドルグループ「AKB48」や「ももいろクローバーZ」などでも見られる。

 今は「アイドル戦国時代」と言われるように、ファンの獲得競争は激しさを増している。デビューしても数年で活動を休止し、忘れられていくアイドルも少なくない。

 その中でもキャンディーズは、ファンが離れずに年を重ねてきた。応援する人たちは60代が多くなったが、「自分が死ぬまでファンであり続ける」と言い切る人もいる。ファンの集いはこれからもずっと続いていくはずだ。(高畠保春)

週刊朝日 2018年4月20日号

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