「企業名=店舗名=連想できるメニュー」が消費者の安心感につながっていると考えられる。ただ、複数ブランドで好業績を計画しているところもある。「九州熱中屋」を筆頭に多彩なブランドを持つDDホールディングス、鶏手羽料理の「鳥良商店」と磯焼きの「磯丸水産」が二枚看板のSFPホールディングス、低価格・統一料金で勝負する「ニパチ」のヨシックス、まだ規模は小さいもののIPO(新規上場)したばかりの一家ダイニングプロジェクトなどが足元で躍進している。これらの企業の共通点は順調な新規出店にある。

 居酒屋業界の大手となると店舗数が多くマルチブランド戦略を採用している企業が多い。総店舗数が焼き肉レストランや寿司業態などを含めて昨年12月末現在で、2729店舗を持つコロワイドや、直営店全店舗数が同436店舗、グループ全体で722店舗数を誇るチムニーなどは、堅調な業績を維持している。

 積極的なM&A(企業合併・買収)に加えて、アルコールなどの飲料の調達において、バイイングパワー(大規模店が持つ購買力)で価格交渉力を維持できる点が強みだ。なかでもチムニーの場合、チムニーブランドの名称を持つ店舗は6店舗でしかなく、「はなの舞」「さかなや道場」などへのブランド転換が成功した代表例とも言えそうだ。

 ちなみに、「一つのビルで複数の階に違う店舗名の居酒屋が入居していても、実は経営する企業は同じという例は意外と多くある」(居酒屋関係者)という。これら、マルチブランド戦略を採用する企業は、一つのブランドが勢いを失った場合、他のブランドに切り替えることで、立地を生かして販売機会ロスを低減させる施策を進めている。

 参入障壁が比較的低いとされる居酒屋経営だが、ファミリーレストランのデニーズが500円(税抜き)の「デニ呑み」、牛丼の吉野家が「吉呑み」など異業種も参戦。

 外食産業内でチョイ飲み需要争奪も増加している。こうしたなか、一時は業界の盟主になったこともあるワタミの変貌が株式市場で注目されている。

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