ワタミの顔でもあった渡邉美樹元取締役会長(非常勤)が取締役を辞任したのが2013年6月。15年12月には介護事業を売却し居酒屋を中心とする外食事業と宅食事業等に集約した。

 15年3月期に最終損益が128億5700万円の赤字となり無配に転落。企業存亡の危機とも懸念されたが、17年3月期には営業・経常利益段階で黒字転換を果たした。また、会社側は今18年3月期の経常利益を前期比4%増の7億5千万円、当期利益を黒字転換の1億円と見込んでいるが、2月に発表された第3四半期(4~12月)決算では、経常利益10億2千万円、当期利益は3億1700万円といずれも通期計画を大幅に超過した。

 ワタミの国内店舗数は昨年12月末現在、474店舗で既存店売上高は前年同期比5.8%増。ワタミでは「『ミライザカ』『三代目鳥メロ』への業態・看板変更を今期の12月までに123店舗実施した効果が出て業績が回復傾向にある」としている。「ミライザカ」は清流鶏の唐揚げを、「三代目鳥メロ」は清流若鶏のモモ一本焼きと焼き鳥、そして生ビール199円(税抜き)をメインに設定したコンセプトで集客力を高めている。

 これまでグループの看板だった「わたみん家」「和民」等の不採算店を一気にブランド変更して、復活の狼煙(のろし)を上げ始めている。株価はすでにその復活を織り込んできた。ワタミの株価は2月に入り、直近の相場全体の歴史的暴落の影響を受けて大幅安となったものの、昨年末には13年の株価水準、つまり渡邉氏辞任の年までの株価修復を達成している。

 実は、復活機運にある老舗居酒屋チェーンはワタミだけではない。「庄や」の大庄、「天狗」のテンアライドといった「昭和のサラリーマン」がお世話になった企業の業績が変化率を伴って回復し始めている。

「不採算店の見直し、オペレーションの再構築、ブランド変更などの効果が表れ始めている」(外食担当アナリスト)のがその背景だ。

 居酒屋チェーンの株価は派手なパフォーマンスを見せることは少ないものの、ほとんどの企業が、飲食券や割引券という株主優待制度を導入しており、個人投資家に根強い人気がある。また、その投資のヒントとなる情報は意外と簡単に入手できる。多くの居酒屋チェーンの上場企業は、前月分の全店・既存店売上高、客単価、客数、店舗数を前年同月期対比で発表している。これらは各企業のホームページや「適時開示情報閲覧サービス」(TDnet)で入手できる。

「最も見ているのは、既存店(開店後1年を経過した店舗)が前年比プラスで推移しているかどうか。さらに、店舗数が順調に増えているかどうかでその企業の勢いが読み取れる」(アナリスト)。既存店が前年実績を上回っていれば「利用者に飽きられていない、集客力がある証拠」(同)でもある。さらに、店舗数は企業規模の拡大のポイントであり、新規出店計画に狂いが出た企業は業績の下方修正に陥るケースがある。

 ブランド変更、看板の差し替えだけではなく、やはりそこには時代に合ったメニューと内装、サービスが組み込まれていないと、競争が一際激しい居酒屋業界では生き残りが難しい。

 投資するなら選別は必要だ。(天野秀夫)

週刊朝日  2018年3月23日号