そもそも、森友学園側と近畿財務局の交渉は2015年半ばまで暗礁に乗り上げていた。財務省が今年2月に公開した資料によると、2015年4月には、学園側が軟弱な地盤を理由に貸付料の減額を求めてきたことに対し、省内で「『無理に本地を借りていただかなくてもよい』と投げかけることも考えている」と、学園との賃貸契約の破棄も検討していた。

 ところが、安倍昭恵首相夫人が同年9月に小学校の名誉校長に就任したころから風向きが変わり始める。同年11月には、昭恵夫人付の政府職員が同省に「問い合わせ」のFAXを送付。その頃から交渉内容が一変した。

 賃貸契約の破棄を検討していたはずが、同年12月には「国有地の売買価格の交渉」に変化。さらには、省内で法律関係の相談をした時は、方針が「売買価格を学校法人に提示して買い受けの可否を判断させるなどの調整が必要」となった。

 同省は2016年6月に学園との売買契約を結んだが、朝日新聞(9日付)の報道では、売却契約の際の決裁文書には、事案の概要などを8項目で記した「調書」があったという。

 だが、国会議員に公開された文書では「4.貸付契約までの経緯」が項目ごとなくなっていたという。契約当時の調書には、この項目で学園から「借り受けて、その後に購入したい」との要望があり、近畿財務局が「本省理財局に相談した」と記載してあったという。そして「学園の要請に応じざるを得ないとの結論」とも記載されていたが、国会議員に公表された文書にはこれらの文言はなくなっていた。

 朝日新聞報道やAさんの自殺報道を受け、野党は9日、国会に同省理財局次長の富山一成氏ら幹部を呼んで野党合同ヒアリングを実施。

野党議員が「自殺したとされるAさんは家族に遺書を残していたというが、財務省が公開するなと圧力をかけたという話もある。本当なのか」と問い詰めたが、同省の幹部は「調査中なのでお答えできません」の一点ばりだった。

 問題当時の近畿財務局長だった武内良樹氏が昨夜、官邸を訪問し、安倍首相、麻生財務相と対応を話し合ったとみられる。森友疑惑の真相は今後、明らかになるのか。(週刊朝日取材班、西岡千史)

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